御名神亭の業務日誌
≫2005年03月26日
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
SS 『鬼哭麺』第六話 「百麺手」前編
「ちぃ…今日も来たか…。」
苦虫を噛み潰したような顔で『青雲飯店アーカム二号店』店長ビン・ワイソンは店の外の一台の屋台を見ながら呟く。
この一週間ですでに店の売り上げは半減している。本来ならこの時間、満席も当たり前なのに今では空席が目立つ。その上、『元氏双包丁』が店を辞めたと言うのでは客寄せも儘ならない。
「コンの奴め…、むっ!そうだ、あの手を使ってみるか。…だが、そうなると、我がラースヤだけでは足りぬな…今夜にでも奴の所にでも行ってみるしかないか…。」
そう呟きながらビン・ワイソンは厨房へと戻ってゆく。
一方、アーカムシティーの中枢、覇道邸では若き総帥『覇道瑠璃』が執務室にて書類に目を通していた。
コンコン
「お嬢様、よろしいでしょうか?」
執事のウィンフィールドがドアをノックする音に、瑠璃は書類から目を離さずに返事をする。
「ええ、お入りなさいウィンフィールド。」
恭しく礼をして執務室に入るウィンフィールド。手には新たなファイルを持っている。
「失礼致します。…早速ですが、お嬢様。ツェ・イーター様のお持ちになられました計画が予定通りに完成する、との報告が入りました。」
「そうですか、ご苦労様です。それで、ゲストの方々はどうなっています?」
「はい、そちらも各店舗、快くご理解頂けているようですので問題は御座いません。」
「よろしい。では、後は料理人次第…となりますね。」
「そちらも…ツェ・イーター様より、『近日中に日時を指定出来るだろう』と…。」
「…近日中?」
「はい、…これは、私の推測ではありますが…最近、何者かが屋台一つで中華料理の大手『青雲飯店』を潰して回っていると聞いております。恐らくその者ではないか…と。」
「そうでしたね。では、そのつもりで食材の準備を怠りなくしておきなさい。」
「心得ております、お嬢様。では、私はこれで失礼致します。」
一礼をしてウィンフィールドが執務室を出て行く。瑠璃はボソリと
「これで悩み事は大十字さんだけになれば良いのだけれど…、それが一番の問題ですわね…。」
と、ため息と共に吐き出した。
深夜。アーカムシティーの一画、コン・タオローが使用している厨房にはいまだ明かりが灯っていた。
「むぅ、これも違うな…。では、次は…。」
「あにさま…まだ寝ないの?」
「ルイリーか、俺はもう少しだけ試したい事があるから先に休んでいなさい。」
「…はーい、でもでも、あにさまも、ちゃんとねないと駄目だからね。」
「あぁ、分かっているさ…。」
少し疲れた顔でルイリーを見送ると、タオローはまたスープを試作する。
“上湯”“白湯”等の中華スープがある中『戴天流調理法』の中でも“極意”とされる『六塵散魂無宝湯』
それは、六種類の素材の究極の配合によって生まれるスープなのだが…。レシピがルイリーが吹く“チャルメラ”の音階に隠されている事は分かった、しかし、六種類の素材の内、ただ一つ分からないのだ。
「くそっ!これも違う…奴との勝負の前に何とか仕上げたいのだが…。」
時間ばかりが無常に過ぎてゆく…。
同じ頃、『百麺手』ビン・ワイソンは『鬼眼冷麺』リュウ・ホージュンの私邸の前に居た。
「やはり、これは必要な事なのだ。いざとなったら力ずくでも納得させるまでだ…。」
ここはアーカムシティー。『食の大黄金時代にして、大暗黒時代にして、大混乱時代。』様々な思いが交錯しながら料理人達は凌ぎ合う…。 (第六話後編に続く。)
苦虫を噛み潰したような顔で『青雲飯店アーカム二号店』店長ビン・ワイソンは店の外の一台の屋台を見ながら呟く。
この一週間ですでに店の売り上げは半減している。本来ならこの時間、満席も当たり前なのに今では空席が目立つ。その上、『元氏双包丁』が店を辞めたと言うのでは客寄せも儘ならない。
「コンの奴め…、むっ!そうだ、あの手を使ってみるか。…だが、そうなると、我がラースヤだけでは足りぬな…今夜にでも奴の所にでも行ってみるしかないか…。」
そう呟きながらビン・ワイソンは厨房へと戻ってゆく。
一方、アーカムシティーの中枢、覇道邸では若き総帥『覇道瑠璃』が執務室にて書類に目を通していた。
コンコン
「お嬢様、よろしいでしょうか?」
執事のウィンフィールドがドアをノックする音に、瑠璃は書類から目を離さずに返事をする。
「ええ、お入りなさいウィンフィールド。」
恭しく礼をして執務室に入るウィンフィールド。手には新たなファイルを持っている。
「失礼致します。…早速ですが、お嬢様。ツェ・イーター様のお持ちになられました計画が予定通りに完成する、との報告が入りました。」
「そうですか、ご苦労様です。それで、ゲストの方々はどうなっています?」
「はい、そちらも各店舗、快くご理解頂けているようですので問題は御座いません。」
「よろしい。では、後は料理人次第…となりますね。」
「そちらも…ツェ・イーター様より、『近日中に日時を指定出来るだろう』と…。」
「…近日中?」
「はい、…これは、私の推測ではありますが…最近、何者かが屋台一つで中華料理の大手『青雲飯店』を潰して回っていると聞いております。恐らくその者ではないか…と。」
「そうでしたね。では、そのつもりで食材の準備を怠りなくしておきなさい。」
「心得ております、お嬢様。では、私はこれで失礼致します。」
一礼をしてウィンフィールドが執務室を出て行く。瑠璃はボソリと
「これで悩み事は大十字さんだけになれば良いのだけれど…、それが一番の問題ですわね…。」
と、ため息と共に吐き出した。
深夜。アーカムシティーの一画、コン・タオローが使用している厨房にはいまだ明かりが灯っていた。
「むぅ、これも違うな…。では、次は…。」
「あにさま…まだ寝ないの?」
「ルイリーか、俺はもう少しだけ試したい事があるから先に休んでいなさい。」
「…はーい、でもでも、あにさまも、ちゃんとねないと駄目だからね。」
「あぁ、分かっているさ…。」
少し疲れた顔でルイリーを見送ると、タオローはまたスープを試作する。
“上湯”“白湯”等の中華スープがある中『戴天流調理法』の中でも“極意”とされる『六塵散魂無宝湯』
それは、六種類の素材の究極の配合によって生まれるスープなのだが…。レシピがルイリーが吹く“チャルメラ”の音階に隠されている事は分かった、しかし、六種類の素材の内、ただ一つ分からないのだ。
「くそっ!これも違う…奴との勝負の前に何とか仕上げたいのだが…。」
時間ばかりが無常に過ぎてゆく…。
同じ頃、『百麺手』ビン・ワイソンは『鬼眼冷麺』リュウ・ホージュンの私邸の前に居た。
「やはり、これは必要な事なのだ。いざとなったら力ずくでも納得させるまでだ…。」
ここはアーカムシティー。『食の大黄金時代にして、大暗黒時代にして、大混乱時代。』様々な思いが交錯しながら料理人達は凌ぎ合う…。 (第六話後編に続く。)