御名神亭の業務日誌
≫2005年03月03日
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SS『鬼哭麺』 第二話「茶道甘史」
アーカムシティーの中心地、アーカム中央駅近くの裏路地を入った先にその店、和風漫画喫茶「茶道甘史」はある。人の入らぬ裏通りにある漫画喫茶とは不可解だが、一歩店内に入るとさらに不可解だった。
店内は怪しげな和風に整えられ、中には畳敷きのBOX席まである。その店の店主、ツェ・イーターはアーカムシティーの不動産業や食材の卸などに裏から手を出せる稀有な存在でもある。それ故この店自体はツェの交渉場所であり、趣味で経営していると言ってもよかった。
(カランカラン)
入り口につけられたベルがけだるそうに鳴ると、ツェはカウンターの椅子から立ち上がる事もせずに客に声をかける。
「いらっしゃい、…おや、タオロー君かね。」
「奥のBOX席は空いているか?」
「ああ、空いているが…、なんだい稼いでいるんだろう?ホテルにでも泊まったらどうだい。そこのルイリーの為にも。」
タオローは鋭い眼差しでツェを睨みながら、
「ふん、確かに売り上げは良いがな…貴様から仕入れる食材、随分ピンハネしているようだな!」
「い、いや、しかし、青雲飯店に知られないように、食材の調達、仕込み厨房の用意、屋台の保管等と、骨が折れるのだぞ?」
「確かにそれは感謝しているが…やり過ぎは貴様の命を縮めるぞ。」
タオローの気迫にツェは思わず身震いする。この男は本気で自分を殺しかねない。
「わ、わかった、確かに幾らか手間代を入れていたのは認める。これからは減らす…。」
ギンッとタオローの目に鋭さが増す。
「い、いや、取らない、手間代は取らない。これで良いだろう?」
「…ふん、初めからそうしていればいいのだ。」
「…儲けにならんなぁ…。ああ、そうだ、ルイリーの魂魄転写は上手くいっただろう?」
「あぁ…、確かに貴様が言った事は本当らしい。だが、本当にルイリーが“戴天流調理法”秘伝のスープのレシピを知っているのか?」
「そう言っていたよ、かの『鬼眼冷麺』リュウ・ホージュンはな。君がマカオの新支店立ち上げに派遣され、途中で資金を現地の悪徳業者に持ち逃げされ…、まぁ、これは裏で青雲飯店、つまりホージュンが糸を引いておった訳だが。
そして、君はホージュンに殺され…表向きは、責任を感じて自殺と言う事になっておったかな。
…そして、兄を失い、悲しみに暮れたルイリーはホージュンにスープのレシピ問われても、一切喋ろうとしなかったばかりに、陵辱の果てに惨殺され、その魂は全て魂魄転写で量子化、挙句五分割され、五人の店主に送られた…と、言う訳だ。」
ツェは大仰なポーズで説明する。
「良く知っているな貴様…。まさか貴様も片棒を担いでいたわけか?」
「わ、私は、脅されてだなぁ…しょうがなく…だからこそ、瀕死の君を助けるよう手配したり、そこのガイノイドに魂魄の統合プログラムを入れて…しかも、持ち運びに便利な幼生型…いや、君の趣味に合わせたのだよ?何たって君は『シスコン』で『ロリコン』だからな…ぁあっ!」
タオローは無言で懐から愛用の和包丁を取り出すとツェの喉もとに突きつける。
「……。」
「冗談だ!冗談!もう言わないからソレをしまってくれたまえ!」
「ふん、くだらぬ事は言わない方が身の為だぞ…。」
ようやく身の危険が去ったツェは大きな溜息をつきながら、
「それで、タオロー君…奥で休むのはいいが、私も商売でね。何か注文を…二人分。」
「ふん、ならウーロン茶を二つだ。」
「やれやれ、君も大概せこ…いやいや、堅実だなぁ…。」
奥のBOX席に消えていく二人(?)を見ながらツェは思いを廻らす。これで又、商売の種は蒔かれた。後はどんな実をつけるか楽しみだと…。
ここは、アーカムシティー、『食の大黄金時代にして、大暗黒時代にして、大混乱時代』。様々な想いを包み今日も夜が更けていく…。 (第二話了。)
ヤバイ…書いてる内に脳内設定が広がってしまった…(汗 この話、長丁場になりそうだ…。
店内は怪しげな和風に整えられ、中には畳敷きのBOX席まである。その店の店主、ツェ・イーターはアーカムシティーの不動産業や食材の卸などに裏から手を出せる稀有な存在でもある。それ故この店自体はツェの交渉場所であり、趣味で経営していると言ってもよかった。
(カランカラン)
入り口につけられたベルがけだるそうに鳴ると、ツェはカウンターの椅子から立ち上がる事もせずに客に声をかける。
「いらっしゃい、…おや、タオロー君かね。」
「奥のBOX席は空いているか?」
「ああ、空いているが…、なんだい稼いでいるんだろう?ホテルにでも泊まったらどうだい。そこのルイリーの為にも。」
タオローは鋭い眼差しでツェを睨みながら、
「ふん、確かに売り上げは良いがな…貴様から仕入れる食材、随分ピンハネしているようだな!」
「い、いや、しかし、青雲飯店に知られないように、食材の調達、仕込み厨房の用意、屋台の保管等と、骨が折れるのだぞ?」
「確かにそれは感謝しているが…やり過ぎは貴様の命を縮めるぞ。」
タオローの気迫にツェは思わず身震いする。この男は本気で自分を殺しかねない。
「わ、わかった、確かに幾らか手間代を入れていたのは認める。これからは減らす…。」
ギンッとタオローの目に鋭さが増す。
「い、いや、取らない、手間代は取らない。これで良いだろう?」
「…ふん、初めからそうしていればいいのだ。」
「…儲けにならんなぁ…。ああ、そうだ、ルイリーの魂魄転写は上手くいっただろう?」
「あぁ…、確かに貴様が言った事は本当らしい。だが、本当にルイリーが“戴天流調理法”秘伝のスープのレシピを知っているのか?」
「そう言っていたよ、かの『鬼眼冷麺』リュウ・ホージュンはな。君がマカオの新支店立ち上げに派遣され、途中で資金を現地の悪徳業者に持ち逃げされ…、まぁ、これは裏で青雲飯店、つまりホージュンが糸を引いておった訳だが。
そして、君はホージュンに殺され…表向きは、責任を感じて自殺と言う事になっておったかな。
…そして、兄を失い、悲しみに暮れたルイリーはホージュンにスープのレシピ問われても、一切喋ろうとしなかったばかりに、陵辱の果てに惨殺され、その魂は全て魂魄転写で量子化、挙句五分割され、五人の店主に送られた…と、言う訳だ。」
ツェは大仰なポーズで説明する。
「良く知っているな貴様…。まさか貴様も片棒を担いでいたわけか?」
「わ、私は、脅されてだなぁ…しょうがなく…だからこそ、瀕死の君を助けるよう手配したり、そこのガイノイドに魂魄の統合プログラムを入れて…しかも、持ち運びに便利な幼生型…いや、君の趣味に合わせたのだよ?何たって君は『シスコン』で『ロリコン』だからな…ぁあっ!」
タオローは無言で懐から愛用の和包丁を取り出すとツェの喉もとに突きつける。
「……。」
「冗談だ!冗談!もう言わないからソレをしまってくれたまえ!」
「ふん、くだらぬ事は言わない方が身の為だぞ…。」
ようやく身の危険が去ったツェは大きな溜息をつきながら、
「それで、タオロー君…奥で休むのはいいが、私も商売でね。何か注文を…二人分。」
「ふん、ならウーロン茶を二つだ。」
「やれやれ、君も大概せこ…いやいや、堅実だなぁ…。」
奥のBOX席に消えていく二人(?)を見ながらツェは思いを廻らす。これで又、商売の種は蒔かれた。後はどんな実をつけるか楽しみだと…。
ここは、アーカムシティー、『食の大黄金時代にして、大暗黒時代にして、大混乱時代』。様々な想いを包み今日も夜が更けていく…。 (第二話了。)
ヤバイ…書いてる内に脳内設定が広がってしまった…(汗 この話、長丁場になりそうだ…。