御名神亭の業務日誌
≫2005年03月13日
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
SS 『鬼哭麺』第四話 「網絡調理」前編
アーカムシティーから一番近い海岸、インスマウスの港からも離れた人の寄り付かない場所に一人の長身痩躯の男と幼い少女…と見紛うばかりのガイノイドがいた。
「あにさま~、聴いててねぇ~。」
チャララ~ララ♪チャラララララ~~♪
「ね、ルイリー上手いでしょぉ。」
胸を張るルイリー、タオローは顔を緩ませながら、そういえば昔、自分が父から料理修業の手始めとしてラーメン修行を始めた時、ルイリーは必死にチャルメラの練習をしていた。何でも『あにさまが屋台を引いて、ルイリーがお客さんを呼び込むの。』とか言っていた気がする。
「もぉう、あにさまちゃんと聴いてないぃ~!」
「ああ、済まない。…ルイリー、少しだけあっちの方で遊んでいてくれるか?」
「ええ~!ルイリーつまんないよぉ~。…でも、あにさまが言うなら分かった…でもでも、あとでちゃんと遊んでよ。」
「ああ、分かっている。ほら、行っておいで。」
タオローの真剣な目に気付いたのか、ルイリーは渋々波打ち際まで歩いて行く。
その直後、後方の道路から車が停車する音がして、一人の女性が近づいてくる。
「まったく、わざわざこんな所まで呼び出して何の用なのかしら、青雲飯店のコン・タオローさん。」
「それは昔の事だ。済まないな『燦月(さんげつ)食品』の諸井開発主任。何、ここなら話を聞かれる心配がないからな。」
実のところタオローはここでなくても良かった。ただ、ルイリーが海を見たいとせがんだからだ。当然そんな素振りは微塵も見せずに本題に入る。
「あんたの所でも、『上海食品公司』の存在は目障りだろう。いくら、双方とも、『青雲飯店』と『美食倶楽部 イノヴェルチ』と言う主になる卸先はあるが、販路拡大は難しい状況だ。」
「それで?何が言いたいのかしら…。」
「『上海食品公司』の食材はかなりの量が本物の食材では無く、安い代替食品に変わっている。そんな事が発覚すればどうだ?」
「…それは…本当の事なの?…で、具体的には…。」
「何、あんたの所の“食肉用の家畜”…随分、“生きが良い”らしいじゃないか。そして、家畜の輸送中に上海食品公司の前で“事故”が起こり、家畜が社内に侵入…。後は当局…特に覇道の食品警察が動く…。」
「…ばっ!こちらのリスクが高すぎるわ!」
「当局が動く前に撤収すれば良い。トラックの運転手は、金を積めば何でもやる連中を知っている。何、上手く逃げるし足は付かない。」
「…分かったわよ、まったく、復讐だか仇討ちだか知らないけど、何がそこまでさせるのか…。ともかく、準備が出来次第、連絡をするわ。では失礼。」
車に戻っていく諸井。そして、話が終わったと見るや駆けて戻ってくるルイリー。
「あにさま、あのおばさんとのお話終わった?」
「私をおばさんと呼ぶな!!!」
「ひゃぁっ。」
車に乗り込もうとしていた諸井が怒声を上げる。…以外に気にしているようであった…。
しかし、気にしていないルイリーは、
「あ~、びっくりしたねぇ、あにさま。」
「ああ、そうだな…。」
「そう言えばね、ルイリー何か大切な事を忘れているの。チャルメラがスープなのって、とうさまが言っていたんだけど、何のことか分かんないねぇ…。」
「大丈夫だよルイリー、すぐに、すぐに全て思い出すからね…。」
タオローはルイリーを抱きしめながら、誓いを新たにルイリーの為なら鬼に、麺鬼になる覚悟をしていた。 (第四話中編に続く)
「あにさま~、聴いててねぇ~。」
チャララ~ララ♪チャラララララ~~♪
「ね、ルイリー上手いでしょぉ。」
胸を張るルイリー、タオローは顔を緩ませながら、そういえば昔、自分が父から料理修業の手始めとしてラーメン修行を始めた時、ルイリーは必死にチャルメラの練習をしていた。何でも『あにさまが屋台を引いて、ルイリーがお客さんを呼び込むの。』とか言っていた気がする。
「もぉう、あにさまちゃんと聴いてないぃ~!」
「ああ、済まない。…ルイリー、少しだけあっちの方で遊んでいてくれるか?」
「ええ~!ルイリーつまんないよぉ~。…でも、あにさまが言うなら分かった…でもでも、あとでちゃんと遊んでよ。」
「ああ、分かっている。ほら、行っておいで。」
タオローの真剣な目に気付いたのか、ルイリーは渋々波打ち際まで歩いて行く。
その直後、後方の道路から車が停車する音がして、一人の女性が近づいてくる。
「まったく、わざわざこんな所まで呼び出して何の用なのかしら、青雲飯店のコン・タオローさん。」
「それは昔の事だ。済まないな『燦月(さんげつ)食品』の諸井開発主任。何、ここなら話を聞かれる心配がないからな。」
実のところタオローはここでなくても良かった。ただ、ルイリーが海を見たいとせがんだからだ。当然そんな素振りは微塵も見せずに本題に入る。
「あんたの所でも、『上海食品公司』の存在は目障りだろう。いくら、双方とも、『青雲飯店』と『美食倶楽部 イノヴェルチ』と言う主になる卸先はあるが、販路拡大は難しい状況だ。」
「それで?何が言いたいのかしら…。」
「『上海食品公司』の食材はかなりの量が本物の食材では無く、安い代替食品に変わっている。そんな事が発覚すればどうだ?」
「…それは…本当の事なの?…で、具体的には…。」
「何、あんたの所の“食肉用の家畜”…随分、“生きが良い”らしいじゃないか。そして、家畜の輸送中に上海食品公司の前で“事故”が起こり、家畜が社内に侵入…。後は当局…特に覇道の食品警察が動く…。」
「…ばっ!こちらのリスクが高すぎるわ!」
「当局が動く前に撤収すれば良い。トラックの運転手は、金を積めば何でもやる連中を知っている。何、上手く逃げるし足は付かない。」
「…分かったわよ、まったく、復讐だか仇討ちだか知らないけど、何がそこまでさせるのか…。ともかく、準備が出来次第、連絡をするわ。では失礼。」
車に戻っていく諸井。そして、話が終わったと見るや駆けて戻ってくるルイリー。
「あにさま、あのおばさんとのお話終わった?」
「私をおばさんと呼ぶな!!!」
「ひゃぁっ。」
車に乗り込もうとしていた諸井が怒声を上げる。…以外に気にしているようであった…。
しかし、気にしていないルイリーは、
「あ~、びっくりしたねぇ、あにさま。」
「ああ、そうだな…。」
「そう言えばね、ルイリー何か大切な事を忘れているの。チャルメラがスープなのって、とうさまが言っていたんだけど、何のことか分かんないねぇ…。」
「大丈夫だよルイリー、すぐに、すぐに全て思い出すからね…。」
タオローはルイリーを抱きしめながら、誓いを新たにルイリーの為なら鬼に、麺鬼になる覚悟をしていた。 (第四話中編に続く)