SS 『鬼哭麺』第四話 「網絡調理」後編
御名神亭の業務日誌
『上海食品公司アーカム支社』はトラック事故で騒然としていた。遅まきながら、覇道の食品警察も動いていた。
「あ~あ、ひでぇ事になってるなぁ…で、ストーン君、状況はどうよ?」
「ネス警部!シャンとして下さい。…ともかく、トラックは『燦月食品』の食肉用の家畜を乗せていたとの事で、事故により『上海食品公司』社屋に侵入。暴れたそうですが、かけつけた燦月食品社員によって別のトラックに回収されたそうです。事故を起こしたトラック乗務員は消えた…と、いうか運輸会社に登録されていない人物だそうです。」
「や~れやれ、結局シッポをつかめずな訳ね。んで、こっちはえらいモンが見つかった訳だ…。」
「はっ!家畜が暴れた際、破壊した区画から登記に無い、違法サイバネアームや代替食品が見つかりました。」
ネスとストーンが見守る玄関前に、一台の車が止まり、中から一人のスーツを着た女性が出てきた。
「ご苦労様です。私は特捜科の麻生純子です。現状は?」
「これはこれは、ご苦労様です。それでは…」
説明を受け端末を操作していた純子はビルから出てくる一行に目が留まる。
「やっと出られたよ~。大変な特別授業になっちゃたねぇ、和樹君。」
「奈都美さんも無事でよかった。」
「まったく、奈都美がドジらなきゃ、もう少し早く出れたんだけどね。」
「んもう、薫ちゃんひどい~。」
「あら、あなた達、こんな所で…。」
「「純子さん!?」」
双方は状況説明をすると、純子は思い出したように、
「悪いんだけど、和樹君を貸して欲しいのよ。どうもビル内に社長が残っているみたいなんだけど、システムがロックしてて、私だけだと時間がかかるの。」
「わかりました。じゃあ、行ってくるからみんなは戻っていて。」
「でも、それなら私だけでも残ります…。」
「大丈夫よ若佳菜先生、終わったら私がちゃんと送り届けるから。さぁ、和樹君行きましょう。」
「はい。」
ビル内に入っていく二人。内部はすでに静まり返っていた。
「早速で悪いけど、社長のン・ウィンシンはネットワークの天才と言われていてね、私のディティクターじゃ通用しないのよ。」
「わかりました、やってみます。」
和樹が電覚でビル内のネットワークに進入、隔壁の突破を試みていたその時、最上階の社長室では余裕の表情のン・ウィンシンと各部から調理機器を振りかざし、なお、苦悶の表情で迫るペトルーシュカにタオローは追い詰められていた。
「くっ!ここでは食材が無い…どうする…。」
「さあ、食材はコン・タオローだ、ペトルーシュカ。なますにしてや…何?」
突然、脳に直接アラームが届く、このビルは先ほど支配権を取り戻したン・ウィンシンがタオローの逃げ場が無いようにロックをかけたはずだった。
「俺のネットワークは完璧だ、なぜ破れるんだ!?」
驚くンの前で、社長室の扉は開き、現われたのは、『食品警察特捜科』の麻生純子だった。
「世の中、絶対って物は無いのよ、ン・ウィンシン社長。あなたには食品取り扱い法、および表記義務違反の容疑があります。おとなしく、お縄につきなさい。」
「まぁ、待ちな。たとえ警察であろうが、俺達は勝負中だぜ。料理人同士の勝負には警察も口を出せない。だろう?刑事さんよぉ。そして、コン・タオロー。」
ンはタオローに近づき、小声で、
「ここで逃げれば、メモリーは吹っ飛ぶぜ。もちろんお前さんが勝ってもなぁ。」
「く、卑怯な…。勝負は勝負だ…。」
仕方ないといった表情の純子は、
「では、私ともう一人が立会人になります。…それと、もう少しまともに調理出来るところで…そうそう、もう一つ!妨害工作は禁止するわね。」
「ふん、まぁいい。それなら俺の店を使え。そして、俺が勝ったら逮捕も無しだ。コイツが勝てばペトルーシュカはくれてやる。」
そのまま、『青雲飯店アーカム三号店』へ向かう一向。純子の車に同乗するタオローは和樹に向かって話しかける。
「お前…人間ではないな?それで審査など出来るのか?」
「!!って、なんで和樹君の事がバレるのよ!?」
焦る純子にタオローはこともなげに、
「俺達、内家の料理人は“気”を見る。こいつはそれが無い。」
「そう、僕はロボットです。だから味はまだ良くわかりませんが、社長室の中で起こった事は見ていました。あのガイノイドのプログラムに僕が作ったディティクターを進入させたので、今頃は表面上は変わりなくても爆破の危険は無いはずです。」
「…そうか…、恩にきるぞ、…和樹。」
「いえ。」
こうなっては、勝負はついたも同然だった。何より、純子の機転により、店にいた客までも審査員として、ンの不正を監視したからである。
「バカな…何故爆発しない!?糞!」
何度も、爆破スイッチを押すが何の反応も無いペトルーシュカ。タオローはそのままペトルーシュカを連れて行く。うなだれるンに手錠をかける純子。
「それと…他の青雲飯店の店長は『代替食品』について、なにも知らないと言っているらしいわ。…あなた、見捨てられたわね。」
「糞っ!くそっ!チクショウー!!」
ン・ウィンシンの叫びだけが空しく響いていた…。
ここはアーカムシティー。『食の大黄金時代にして、大暗黒時代にして、大混乱時代。』悪の料理人は跋扈しているものの、正義の剣もまた、折れてはいなかったのである。 (第四話 了)
な、何とか、終わった…いや、この話うまくまとまらなくて、まいった…。次は…どうなるやら(汗
「あ~あ、ひでぇ事になってるなぁ…で、ストーン君、状況はどうよ?」
「ネス警部!シャンとして下さい。…ともかく、トラックは『燦月食品』の食肉用の家畜を乗せていたとの事で、事故により『上海食品公司』社屋に侵入。暴れたそうですが、かけつけた燦月食品社員によって別のトラックに回収されたそうです。事故を起こしたトラック乗務員は消えた…と、いうか運輸会社に登録されていない人物だそうです。」
「や~れやれ、結局シッポをつかめずな訳ね。んで、こっちはえらいモンが見つかった訳だ…。」
「はっ!家畜が暴れた際、破壊した区画から登記に無い、違法サイバネアームや代替食品が見つかりました。」
ネスとストーンが見守る玄関前に、一台の車が止まり、中から一人のスーツを着た女性が出てきた。
「ご苦労様です。私は特捜科の麻生純子です。現状は?」
「これはこれは、ご苦労様です。それでは…」
説明を受け端末を操作していた純子はビルから出てくる一行に目が留まる。
「やっと出られたよ~。大変な特別授業になっちゃたねぇ、和樹君。」
「奈都美さんも無事でよかった。」
「まったく、奈都美がドジらなきゃ、もう少し早く出れたんだけどね。」
「んもう、薫ちゃんひどい~。」
「あら、あなた達、こんな所で…。」
「「純子さん!?」」
双方は状況説明をすると、純子は思い出したように、
「悪いんだけど、和樹君を貸して欲しいのよ。どうもビル内に社長が残っているみたいなんだけど、システムがロックしてて、私だけだと時間がかかるの。」
「わかりました。じゃあ、行ってくるからみんなは戻っていて。」
「でも、それなら私だけでも残ります…。」
「大丈夫よ若佳菜先生、終わったら私がちゃんと送り届けるから。さぁ、和樹君行きましょう。」
「はい。」
ビル内に入っていく二人。内部はすでに静まり返っていた。
「早速で悪いけど、社長のン・ウィンシンはネットワークの天才と言われていてね、私のディティクターじゃ通用しないのよ。」
「わかりました、やってみます。」
和樹が電覚でビル内のネットワークに進入、隔壁の突破を試みていたその時、最上階の社長室では余裕の表情のン・ウィンシンと各部から調理機器を振りかざし、なお、苦悶の表情で迫るペトルーシュカにタオローは追い詰められていた。
「くっ!ここでは食材が無い…どうする…。」
「さあ、食材はコン・タオローだ、ペトルーシュカ。なますにしてや…何?」
突然、脳に直接アラームが届く、このビルは先ほど支配権を取り戻したン・ウィンシンがタオローの逃げ場が無いようにロックをかけたはずだった。
「俺のネットワークは完璧だ、なぜ破れるんだ!?」
驚くンの前で、社長室の扉は開き、現われたのは、『食品警察特捜科』の麻生純子だった。
「世の中、絶対って物は無いのよ、ン・ウィンシン社長。あなたには食品取り扱い法、および表記義務違反の容疑があります。おとなしく、お縄につきなさい。」
「まぁ、待ちな。たとえ警察であろうが、俺達は勝負中だぜ。料理人同士の勝負には警察も口を出せない。だろう?刑事さんよぉ。そして、コン・タオロー。」
ンはタオローに近づき、小声で、
「ここで逃げれば、メモリーは吹っ飛ぶぜ。もちろんお前さんが勝ってもなぁ。」
「く、卑怯な…。勝負は勝負だ…。」
仕方ないといった表情の純子は、
「では、私ともう一人が立会人になります。…それと、もう少しまともに調理出来るところで…そうそう、もう一つ!妨害工作は禁止するわね。」
「ふん、まぁいい。それなら俺の店を使え。そして、俺が勝ったら逮捕も無しだ。コイツが勝てばペトルーシュカはくれてやる。」
そのまま、『青雲飯店アーカム三号店』へ向かう一向。純子の車に同乗するタオローは和樹に向かって話しかける。
「お前…人間ではないな?それで審査など出来るのか?」
「!!って、なんで和樹君の事がバレるのよ!?」
焦る純子にタオローはこともなげに、
「俺達、内家の料理人は“気”を見る。こいつはそれが無い。」
「そう、僕はロボットです。だから味はまだ良くわかりませんが、社長室の中で起こった事は見ていました。あのガイノイドのプログラムに僕が作ったディティクターを進入させたので、今頃は表面上は変わりなくても爆破の危険は無いはずです。」
「…そうか…、恩にきるぞ、…和樹。」
「いえ。」
こうなっては、勝負はついたも同然だった。何より、純子の機転により、店にいた客までも審査員として、ンの不正を監視したからである。
「バカな…何故爆発しない!?糞!」
何度も、爆破スイッチを押すが何の反応も無いペトルーシュカ。タオローはそのままペトルーシュカを連れて行く。うなだれるンに手錠をかける純子。
「それと…他の青雲飯店の店長は『代替食品』について、なにも知らないと言っているらしいわ。…あなた、見捨てられたわね。」
「糞っ!くそっ!チクショウー!!」
ン・ウィンシンの叫びだけが空しく響いていた…。
ここはアーカムシティー。『食の大黄金時代にして、大暗黒時代にして、大混乱時代。』悪の料理人は跋扈しているものの、正義の剣もまた、折れてはいなかったのである。 (第四話 了)
な、何とか、終わった…いや、この話うまくまとまらなくて、まいった…。次は…どうなるやら(汗