SS 『鬼哭麺』第四話 「網絡調理」中編
御名神亭の業務日誌
僕の名は『友永和樹』。『HIKARI』によって、“人間の食”を調べる為に造られたロボットだ。
僕は『皇路料理専門学園』に転入して調査をしていた。そこで、奈都美さん達と出会い、食文化と料理の素晴らしさを知った。
だが、食は効率を求めれば良いと食文化破壊の結論を出した『HIKARI』を僕は、出会った人達との大切な時間や僕の想いをHIKARIに送る事で説得し、皇路学園での日常を手に入れた。
「ねぇねぇ和樹君、今日の特別見学、楽しみだよねぇ。」
「うん、そうだね。」
「そう言えば、今日は何処に行くんだって?」
「ったく、薫ってば、そんな事も知らずにドコ行くつもりなんだよ。いい、今日は『上海食品公司』に最新調理機器なんかを見るんだろう。」
「ちょりっと見に行くですわ。」
「…千絵梨も行くのかよ。」
「はい、絵の気分転換に、それに和樹さんも行かれるようでしたから。」
「あんたは何しに来てるんだよ…。」
こうして四人と話していると、若佳菜先生がやって来た。
「ずいぶん、盛り上がってるじゃない。でも、あちらでは静かにね。」
「「は~い。」」
「よろしい、ではバスにのって行きましょう。」
僕達はまだこの後起こる事を知らなかった…。
一方、皇路学園の一行が向かっている『上海食品公司』では…。
『青雲飯店 アーカム三号店』の店長、ン・ウィンシンではあったが、料理人ではない彼が店に出るのは一日の売り上げを集計する時か、店員が解決出来ないトラブルが起こった時だけであり、普段は『上海食品公司アーカム支社』最上階の社長室にいた。
後は、数名の店員と自動調理器、それに多数のアルバイトによって成り立っていたのである。
ピピッ
社長室のインターホンが鳴り、秘書の声が聞こえる。
「社長、『皇路料理専門学園』の生徒がこちらに向かっているそうです。」
「ああ社会見学とか言うやつだな。ではいつも通り“表”の見学ルートで頼む。」
指示だけ済ますと早々にインターホンを切る。だがまたもインターフォンが鳴る、しかも通常回線ではない、青雲飯店の店長のみの回線だ。
「お久しぶりですン・ウィンシン殿、ビン・ワイソン殿からこちらの支援にと、元兄弟馳せ参じました。」
「なんだと?聞いてはいねえが…まぁ、良いだろう、社内を自由に歩けるようにはしておく。…だが、セキュリティーは万全だ。お前らの出番はねぇぜ。」
「…十分です。では。」
インターホンが切れる。そのまま、ン・ウィンシンは社長室の隣の部屋、彼の趣味の為の部屋へと入っていく。
「くく、いよいよ出番だぜ、ペトルーシュカ…。」
一方こちらは…何と言うか、緊張感の無い一行ではあるが…
「うっわ~。凄いなぁ…うちでもここまで大規模な配送システムは無いんじゃないかなぁ。」
「深佳、なんて事言ってるのよ、まったく。比べる物でもないでしょう?」
「まぁ、そうなんだけどさー。親父に聞かせたらきっと悔しがるよ。」
「まったく、あたしには縁が無い話だねぇ…。」
「薫ちゃんは、体力で勝負じゃない。ねぇ。」
「まあねぇ…って、あたしをバカにする気か奈都美ぃ~。」
「イタイイタイ、薫ちゃん本気でつねらないでぇ~。」
「二人とも仲がよろしいですわねぇ。」
ともかく、見学ルートに沿って社内を歩いていたのだが、その時。
キキキキキッ!!ドカーーン!!
正面玄関にトラックが横転したまま突撃、コンテナから出てきたそれは…見たことの無い姿の獣…『燦月食品』の『複合(キメラ)家畜』であった。
そのまま、上海食品公司の中で暴れる家畜達。その混乱に乗じて、長身痩躯の男もビル内に侵入する。
「いったい何が起こっている!!」
「そ、それが、正体不明の獣が暴れて…手が付けられませんっ。」
「セキュリティーもダウンしています!」
「ちぃ…、まさか…あの野郎の仕業か!とにかく、部外者はとっとと外に出せ!奥に侵入する奴らは始末しろ!」
社内の喧騒は激しくなる。一方で、
「なになに?何が起こってるの、和樹くん。」
「…わからない、ともかく非常口に行こう。」
「それじゃあこっちね。みんなはぐれないで。」
逃げる途中、奈都美が遅れ、転んだ先には…うなぎの化け物だった。
「か、和樹君!!」
「しまった!間に合わない!」
「天魔輻射熱!!」
間一髪現われたのは、元兄弟。見事なコンビネーションでうなぎを捌き、蒲焼にしていた。
「娘。大事無いか?ここから早々に立ち去られよ。」
「お、同じ顔!?じゃなくて、あ、あの、ありがとうございました。」
「奈都美さん、さぁ、こっちだよ。」
「う、うん、和樹君。それじゃぁ。」
挨拶もそこそこに立ち去る一同、元兄弟も次の獲物へと向かって行った。
丁度その頃、最上階の社長室では、
「ふ、やはり、ここまで来たかコン・タオロー!」
「さあ、覚悟は出来たか?ン・ウィンシン!!」
「まさか!自慢じゃないが俺は料理も戦いも得意じゃ無い。お前の相手はコイツだ!」
「な、なに!?」
現われたのは…ガイノイドのペトルーシュカ。
「さぁて、コイツは俺の技術を詰め込んだ最高傑作だ。因みに、料理に負けたり、頭と胴体が離れたりすると、メモリーが吹っ飛ぶ仕掛けがしてある。」
「…外道が…。」
「勝てばいいのさ、行け!ロボコック、ペトルーシュカ!」
…名前のセンスは無いようだ…
兎も角、手の出せないタオローはどうなってしまうのか?第四話後編に続く!
僕は『皇路料理専門学園』に転入して調査をしていた。そこで、奈都美さん達と出会い、食文化と料理の素晴らしさを知った。
だが、食は効率を求めれば良いと食文化破壊の結論を出した『HIKARI』を僕は、出会った人達との大切な時間や僕の想いをHIKARIに送る事で説得し、皇路学園での日常を手に入れた。
「ねぇねぇ和樹君、今日の特別見学、楽しみだよねぇ。」
「うん、そうだね。」
「そう言えば、今日は何処に行くんだって?」
「ったく、薫ってば、そんな事も知らずにドコ行くつもりなんだよ。いい、今日は『上海食品公司』に最新調理機器なんかを見るんだろう。」
「ちょりっと見に行くですわ。」
「…千絵梨も行くのかよ。」
「はい、絵の気分転換に、それに和樹さんも行かれるようでしたから。」
「あんたは何しに来てるんだよ…。」
こうして四人と話していると、若佳菜先生がやって来た。
「ずいぶん、盛り上がってるじゃない。でも、あちらでは静かにね。」
「「は~い。」」
「よろしい、ではバスにのって行きましょう。」
僕達はまだこの後起こる事を知らなかった…。
一方、皇路学園の一行が向かっている『上海食品公司』では…。
『青雲飯店 アーカム三号店』の店長、ン・ウィンシンではあったが、料理人ではない彼が店に出るのは一日の売り上げを集計する時か、店員が解決出来ないトラブルが起こった時だけであり、普段は『上海食品公司アーカム支社』最上階の社長室にいた。
後は、数名の店員と自動調理器、それに多数のアルバイトによって成り立っていたのである。
ピピッ
社長室のインターホンが鳴り、秘書の声が聞こえる。
「社長、『皇路料理専門学園』の生徒がこちらに向かっているそうです。」
「ああ社会見学とか言うやつだな。ではいつも通り“表”の見学ルートで頼む。」
指示だけ済ますと早々にインターホンを切る。だがまたもインターフォンが鳴る、しかも通常回線ではない、青雲飯店の店長のみの回線だ。
「お久しぶりですン・ウィンシン殿、ビン・ワイソン殿からこちらの支援にと、元兄弟馳せ参じました。」
「なんだと?聞いてはいねえが…まぁ、良いだろう、社内を自由に歩けるようにはしておく。…だが、セキュリティーは万全だ。お前らの出番はねぇぜ。」
「…十分です。では。」
インターホンが切れる。そのまま、ン・ウィンシンは社長室の隣の部屋、彼の趣味の為の部屋へと入っていく。
「くく、いよいよ出番だぜ、ペトルーシュカ…。」
一方こちらは…何と言うか、緊張感の無い一行ではあるが…
「うっわ~。凄いなぁ…うちでもここまで大規模な配送システムは無いんじゃないかなぁ。」
「深佳、なんて事言ってるのよ、まったく。比べる物でもないでしょう?」
「まぁ、そうなんだけどさー。親父に聞かせたらきっと悔しがるよ。」
「まったく、あたしには縁が無い話だねぇ…。」
「薫ちゃんは、体力で勝負じゃない。ねぇ。」
「まあねぇ…って、あたしをバカにする気か奈都美ぃ~。」
「イタイイタイ、薫ちゃん本気でつねらないでぇ~。」
「二人とも仲がよろしいですわねぇ。」
ともかく、見学ルートに沿って社内を歩いていたのだが、その時。
キキキキキッ!!ドカーーン!!
正面玄関にトラックが横転したまま突撃、コンテナから出てきたそれは…見たことの無い姿の獣…『燦月食品』の『複合(キメラ)家畜』であった。
そのまま、上海食品公司の中で暴れる家畜達。その混乱に乗じて、長身痩躯の男もビル内に侵入する。
「いったい何が起こっている!!」
「そ、それが、正体不明の獣が暴れて…手が付けられませんっ。」
「セキュリティーもダウンしています!」
「ちぃ…、まさか…あの野郎の仕業か!とにかく、部外者はとっとと外に出せ!奥に侵入する奴らは始末しろ!」
社内の喧騒は激しくなる。一方で、
「なになに?何が起こってるの、和樹くん。」
「…わからない、ともかく非常口に行こう。」
「それじゃあこっちね。みんなはぐれないで。」
逃げる途中、奈都美が遅れ、転んだ先には…うなぎの化け物だった。
「か、和樹君!!」
「しまった!間に合わない!」
「天魔輻射熱!!」
間一髪現われたのは、元兄弟。見事なコンビネーションでうなぎを捌き、蒲焼にしていた。
「娘。大事無いか?ここから早々に立ち去られよ。」
「お、同じ顔!?じゃなくて、あ、あの、ありがとうございました。」
「奈都美さん、さぁ、こっちだよ。」
「う、うん、和樹君。それじゃぁ。」
挨拶もそこそこに立ち去る一同、元兄弟も次の獲物へと向かって行った。
丁度その頃、最上階の社長室では、
「ふ、やはり、ここまで来たかコン・タオロー!」
「さあ、覚悟は出来たか?ン・ウィンシン!!」
「まさか!自慢じゃないが俺は料理も戦いも得意じゃ無い。お前の相手はコイツだ!」
「な、なに!?」
現われたのは…ガイノイドのペトルーシュカ。
「さぁて、コイツは俺の技術を詰め込んだ最高傑作だ。因みに、料理に負けたり、頭と胴体が離れたりすると、メモリーが吹っ飛ぶ仕掛けがしてある。」
「…外道が…。」
「勝てばいいのさ、行け!ロボコック、ペトルーシュカ!」
…名前のセンスは無いようだ…
兎も角、手の出せないタオローはどうなってしまうのか?第四話後編に続く!