御名神亭の業務日誌
≫2005年05月15日
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SS 『食のアーカムシリーズ』 「寿司 安藤」
「「ぃらっしゃいっ!」」
威勢の良い挨拶で出迎えられるこの店、『寿司 安藤』はアーカムシティーの表通りの一画にある老舗の寿司屋として知られている。
そして、客足もひとまず落ち着いた頃、一人の客がやってきた。
「いらっしゃぁ~い。って、あら、ティベさん。お久しぶりねぇ~。」
「新沼ちゃぁん、お久しぶりぃ~。ごめんなさいねぇ~、ここの所あたしのお店も忙しくってさぁ。なかなか来れなかったのよ~。」
入ってきた客は『ブラックリッチ』の中でも選りすぐりの七店『アンナクロース』の肉料理のティベリウス。特に内臓料理では、アーカム広しと言えども右に出るもの無し、と言われた料理人である。
そして出迎えた新沼とはオカマ友達なのである。
「あら、忙しいのは良い事じゃないの。ほら、ビックサム!お客様にお茶とおしぼりをお出しして。」
そう言われて、奥から出てきた大男がたどたどしくお茶を出す。
「は、はい、ど、どうぞ…。」
「どうもぉ。サムちゃんもお元気ぃ~?」
「…おで、あ、あの…。」
からかうティベリウスに本気で困惑するビックサム。
「ちょっと、ティベさん。駄目よぉ、ビックサムはあたしのモノなんだから。ほら、あんたも、もういいから裏で片付けでもしてなさい。」
新沼に言われてビックサムが店の奥に引っ込む。
「それはそうと、今日は新沼ちゃんと渡部のじいさんだけ?安藤の親方や若頭のジェイを見に来たのにぃ。」
「もう、ティベさんのいけずぅ。
親方は商工会の会合。ジェイは今日の仕入れでお気に召さなかったみたいでね、『こんなネタじゃ、俺の手がくさっちまわぁ。』って…ジェイの場合、ただサボりたいだけなのよぉ」
「あら、残念。久しぶりにジェイの『二挺片手返し』が見たかったのにぃ~。」
『二挺片手返し』本来両手で握る(本手返し)寿司を片手で、しかも左右で二貫同時に握るジェイの大技。
「まぁまぁ、ともかく何時もの山芋とオクラの軍艦ね。」
「そうそう、これ!あ、次はアボガドロールね。」
食べる前から次の注文をするティベリウス、それを何時ものことと新沼が仕事に入る。
渡部一斉は頑なに“江戸前”のみを握るために結果、“変り種”は全て新沼の仕事だった。
「あぁ~ん、ネットリしてお・い・し・いわぁ~。」
「ありがと、アボガドロールお待ち。そういえばティベさんのお店、繁盛してるって良いことじゃない。」
「まぁねぇ、ちょっと、お肉の仕入先を変えたのよ、『沙耶の肉屋』って、小娘とちょっと頼りないけど良い男の店でね。近頃評判なのよぉ~。
あぁ、渡部さん。昆布締めと中トロお願い。」
「……。」
無言で仕事をする一斉と話を続ける新沼。
「そぉなの~。
そう言えばさ、あんたんとこにもカッコいい和食の店長が居るじゃない?今度、紹介してよぉ。」
「そりゃ、ティトスってのが居るけどさぁ~、駄目よあれは、無口で無愛想なんだもん。
それより今度、若い子漁りに行かない?いいお店見つけたのよ~。
あ、新沼ちゃん、トンカツ巻きお願い。」
「まいど。そう…そりゃ残念。で、男の子?女の子?あたしはどっちでも良いんだけどさ。」
「…お待ち…。」
こちらの話を無視して一斉が寿司を出す。いつもの光景だった。
「はっ、あんたも大概ヘンタイね~。」
「あんただって同じでしょうが。」
「ま、そうなんだけど。」
二人のオカマ…しかも二人して両刀なのだが…は、他にも客が居る店内でかなり危ない話をさらりとしてのける。
これも何時もの事なので客も動じない。
そんなこんなでかなりの時間が過ぎていた。
「ふう、おいしかったわ~。それじゃあ、来週金曜、お互い店が終わったら連絡するってことでよろしくねん。」
「分かってるわよ。それじゃティベさんもお仕事頑張ってね。
ありあとやしたー!」
夜の街にオカマが一人、人ごみに紛れていく。ここはアーカムシティー。
『食の大黄金時代にして、大暗黒時代にして、大混乱時代。』
料理人なら、オカマでも分け隔てなく受け入れる街。 (外伝4話 了。)
威勢の良い挨拶で出迎えられるこの店、『寿司 安藤』はアーカムシティーの表通りの一画にある老舗の寿司屋として知られている。
そして、客足もひとまず落ち着いた頃、一人の客がやってきた。
「いらっしゃぁ~い。って、あら、ティベさん。お久しぶりねぇ~。」
「新沼ちゃぁん、お久しぶりぃ~。ごめんなさいねぇ~、ここの所あたしのお店も忙しくってさぁ。なかなか来れなかったのよ~。」
入ってきた客は『ブラックリッチ』の中でも選りすぐりの七店『アンナクロース』の肉料理のティベリウス。特に内臓料理では、アーカム広しと言えども右に出るもの無し、と言われた料理人である。
そして出迎えた新沼とはオカマ友達なのである。
「あら、忙しいのは良い事じゃないの。ほら、ビックサム!お客様にお茶とおしぼりをお出しして。」
そう言われて、奥から出てきた大男がたどたどしくお茶を出す。
「は、はい、ど、どうぞ…。」
「どうもぉ。サムちゃんもお元気ぃ~?」
「…おで、あ、あの…。」
からかうティベリウスに本気で困惑するビックサム。
「ちょっと、ティベさん。駄目よぉ、ビックサムはあたしのモノなんだから。ほら、あんたも、もういいから裏で片付けでもしてなさい。」
新沼に言われてビックサムが店の奥に引っ込む。
「それはそうと、今日は新沼ちゃんと渡部のじいさんだけ?安藤の親方や若頭のジェイを見に来たのにぃ。」
「もう、ティベさんのいけずぅ。
親方は商工会の会合。ジェイは今日の仕入れでお気に召さなかったみたいでね、『こんなネタじゃ、俺の手がくさっちまわぁ。』って…ジェイの場合、ただサボりたいだけなのよぉ」
「あら、残念。久しぶりにジェイの『二挺片手返し』が見たかったのにぃ~。」
『二挺片手返し』本来両手で握る(本手返し)寿司を片手で、しかも左右で二貫同時に握るジェイの大技。
「まぁまぁ、ともかく何時もの山芋とオクラの軍艦ね。」
「そうそう、これ!あ、次はアボガドロールね。」
食べる前から次の注文をするティベリウス、それを何時ものことと新沼が仕事に入る。
渡部一斉は頑なに“江戸前”のみを握るために結果、“変り種”は全て新沼の仕事だった。
「あぁ~ん、ネットリしてお・い・し・いわぁ~。」
「ありがと、アボガドロールお待ち。そういえばティベさんのお店、繁盛してるって良いことじゃない。」
「まぁねぇ、ちょっと、お肉の仕入先を変えたのよ、『沙耶の肉屋』って、小娘とちょっと頼りないけど良い男の店でね。近頃評判なのよぉ~。
あぁ、渡部さん。昆布締めと中トロお願い。」
「……。」
無言で仕事をする一斉と話を続ける新沼。
「そぉなの~。
そう言えばさ、あんたんとこにもカッコいい和食の店長が居るじゃない?今度、紹介してよぉ。」
「そりゃ、ティトスってのが居るけどさぁ~、駄目よあれは、無口で無愛想なんだもん。
それより今度、若い子漁りに行かない?いいお店見つけたのよ~。
あ、新沼ちゃん、トンカツ巻きお願い。」
「まいど。そう…そりゃ残念。で、男の子?女の子?あたしはどっちでも良いんだけどさ。」
「…お待ち…。」
こちらの話を無視して一斉が寿司を出す。いつもの光景だった。
「はっ、あんたも大概ヘンタイね~。」
「あんただって同じでしょうが。」
「ま、そうなんだけど。」
二人のオカマ…しかも二人して両刀なのだが…は、他にも客が居る店内でかなり危ない話をさらりとしてのける。
これも何時もの事なので客も動じない。
そんなこんなでかなりの時間が過ぎていた。
「ふう、おいしかったわ~。それじゃあ、来週金曜、お互い店が終わったら連絡するってことでよろしくねん。」
「分かってるわよ。それじゃティベさんもお仕事頑張ってね。
ありあとやしたー!」
夜の街にオカマが一人、人ごみに紛れていく。ここはアーカムシティー。
『食の大黄金時代にして、大暗黒時代にして、大混乱時代。』
料理人なら、オカマでも分け隔てなく受け入れる街。 (外伝4話 了。)