御神たちの聖夜 中篇
御名神亭の業務日誌
さて、光輝、鋼刃、行きますえ!」
「はい!」 「応!」
伊豆半島から南下した海上に浮かぶ島、御島を丸ごと敷地とし、生徒、教師以外に都市機能部の関係者をも含めれば人口約一万人を有する巨大学園都市、私立御島学園。
その北側海岸。
陸地側に御門ツネ(みかど つね)、御名神光輝(みなかみ こうき)、御剣鋼刃(みつるぎ こうじん)の御神の一族で実力的にも最高位に位置する三人、海上上空に不気味な黒雲の上に乗った身の丈2メートルを越え陰陽師の装束を纏った御霊(ごりょう)一族の尖兵、御霊火呼麻呂(ごりょう ひこまろ)。
今まさに魑魅魍魎との戦いが始まろうとしていた。
「はい!」 「応!」
伊豆半島から南下した海上に浮かぶ島、御島を丸ごと敷地とし、生徒、教師以外に都市機能部の関係者をも含めれば人口約一万人を有する巨大学園都市、私立御島学園。
その北側海岸。
陸地側に御門ツネ(みかど つね)、御名神光輝(みなかみ こうき)、御剣鋼刃(みつるぎ こうじん)の御神の一族で実力的にも最高位に位置する三人、海上上空に不気味な黒雲の上に乗った身の丈2メートルを越え陰陽師の装束を纏った御霊(ごりょう)一族の尖兵、御霊火呼麻呂(ごりょう ひこまろ)。
今まさに魑魅魍魎との戦いが始まろうとしていた。
海岸から少し下がった位置に控えている御神の子供たち4人、御剣みこと(みつるぎ みこと)、御剣ほむら(みつるぎ ほむら)、御門色(みかど しき)、御名神雷(みなかみ らい)の四人は大人たちの戦いを見守るしかなかった。
「…ところで…、そもそも御霊ってどんなやつらだっけ?」
「ちょっ!」
ほむらの微妙に空気を読まない発言にみことは思考が停止しかける。
(わが双子の妹ながら時々何を言ってるんだか…)
「あはは…、ほむららしいなぁ」
「だ、だってぇ、敵ならぶっ潰せば良いだけだけど、なんか、ばあちゃんもあの大男も顔見知りっぽいじゃんかよぉ」
場違いに笑う雷と、そんな雷の笑いにちょっと反論してみるほむら、二人ともあまり空気を読まない子だったなぁ、とみことは思ってみる。
大体三人でいるとこんな感じで進んでしまうのでみことがまとめ役、というかお姉さん役になるのだった。
今回違うのは、色がいる事で、恐る恐ると言った感じでほむらの疑問に答える。
「…え、えっと…御霊というのんは…。
むか~し、えっと、平安の頃に御門家が出来たんどすが、御門の理念に…ひいては御神としての生き方に疑問を持った人たちが離反して作り上げた人たちやそうです…」
「御神としての生き方?」
「御神は人ならざる力を持ちながら、人の中に紛れて生き、事あらば立ち上がるべき存在、って父さんは言ってたかな?」
「雷君、さっすが、御神の一族の総代の息子だね!
って言うかほむらちゃん、父さんも時々言ってるんだけど?」
ある意味、墓穴を掘ったほむらは慌てて質問を変える。
「え、えっと、じゃあ、御霊の目的ってなんだ?」
「は、はい、御霊は…お師匠様の言うんには、人ならざる力は人間の上に立つ為の神の力だ、と。
せやから、この日本を御霊の思うがままの国にする為に国家転覆を図っているそうどす」
「なんか大げさな事言ってるなぁ~」
「まぁ一応、この御島は日本に点在する龍穴、要の一つだしねぇ」
「だから昔、…え~っと、確か江戸時代ぐらいに御鏡家から分家して御島家を作って住まわせたって言ってたかな?」
「あ、そうなんだ。
しっかし、だからって一人で勝ち目なんてあるのか?
ばあちゃんは良く知らないけど親父も光輝おじさんも戦闘のプロだぜ?」
「…お師匠様も御門家の長、大御門の称号は伊達やありまへん。
けど、あちらさんにも勝算はあるんでしょうなぁ」
子供たちの疑問はすぐに解けた。
御霊火呼麻呂がなにやら唱えると黒雲の大きさを無視して、中から次々と魑魅魍魎の類がぞろぞろと出現してきたのだ。」
「やれやれ、いきなり『百鬼夜行』とは大盤振る舞いどすなぁ」
「なーに、まとめてなぎ払うのみ!」
「…まずは出方見てみますか」
鋼刃が真っ先に飛び出し、海岸に着いた魑魅魍魎の先陣を切り伏せる。
光輝もそれに続き、“力”を発動、右手の手刀の光が伸び剣状に、左手から連続で光弾を発射していく、しかも、事前に御名神家の“複写”で鋼刃の体術を得ていた。
ツネも複数の式神を操りながら、接近する妖を消滅させていた。
「すっげえな…本当にオレ達出番無しだな」
「だね。
ところで色ちゃん、ツネおばあちゃんのアレは何?」
アレとは妖の消滅の事だ。
「…あ、あれは、五行の応用おす…。
五行ゆうんは、分かります?」
「…えっと、木火土金水のことだよね?確か、御門にもそれぞれあったよね」
「はい、御門の場合、得意な力を現します。
それで…、五行は、簡単に言うと『相生』『相剋』で成り立ちます。
なので、全ての力を使いこなせる空御門は五行に乗っ取って、妖の属性を相剋して存在できなくできるんおす」
理解の程度は異なるものの、三人はうなずく。
ふと雷は思いついて聞いてみる。
「凄いな…えっと、色はアレできるの?」
「と、とととととっとんでもあらしまへん!
あ、アレをあんなに早く属性を読んで術を組んで実戦レベルで使えるなんて、うちはまだまだ出来はしません!
そういう意味で、『使い系』の能力者は実践的なんおす」
ここで言う『使い系』の能力とは光輝の“光”、雷の“雷”、ほむらの“炎”等、元素そのものを使いこなす力で、単一属性ながら身体を動かすのと同様自然に、しかも幅広く応用の利く能力なのである。
「しかも、お師匠様は放った式でも似たことをしてますんや」
「どういう事だ?」
「見てください。
飛び交う式の中、一際大きい物がありますやろ?
あれは、“式王子”言いまして、各属性を持たせた他の式を集中管理して相剋してるんおす」
「なんか凄いことしてるんだねぇ」
「それじゃ、もう勝ったも同然だな」
「…いや、そうも言っていられないみたいだ」
ほむらが楽観するのを、雷がさえぎる。
見れば、魑魅魍魎の群れのほとんどは上空からの攻撃に切り替えてきていた。
こうなると、接近戦が主で、気合の一閃で刀身から発生する衝撃波も射程に限度があり連発しづらい。 そのため鋼刃は圧倒的に不利になる。
光輝の光弾、光線も距離を取られると命中精度が落ちてしまう。
現状まともに対応できるのはツネだけになっていた。
「相手はあの黒雲に乗っている上、妖を容赦なく盾に使ってます」
「しかもどんどん湧いてきてるしな…あれ、火呼麻呂とか言うやつ一人の力じゃ無いだろ?」
ほむらの言うとおり、いくら強力な術者であろうと一人の術者で既に千を越える魑魅魍魎は出現できない。
みことはなんとなく思いついた事を口にする。
「…あれ、多分黒雲を中継して別の場所でたくさんの人が呼び出してるんじゃ無いかな?」
「…だとしたらキリが無いな…」
その時子供たちの背後に気配が二人。
「あっれ~、以外に手こずってるねぇ」
「え?楓ちゃん…と、霞ちゃん?!」
やってきたのは楓と霞だった。
「いや、さすがにあんだけドンパチやってれば気がつくしねぇ~。
パーティーの時間も迫ってるし、お手伝いに来たんだけど…あたし、あんまり約に立たないかな?」
「ミーちゃんが怖がってるから早く終わらせたい…」
子供たちがどうしたものかと考えていると、ツネが子供たちを呼んだ。
「さて、埒があきまへんよって、裏技をつかいますえ。
とりあえず、鋼刃! とっとと、本気をだしなはれ!」
「!
し、しかし、あれは後のことが…」
「やかましい!
そこの所もフォローするよってとっととやりい!
そいから、光輝! 今ある式王子にありったけの力を込めぇ!」
「は、はい!」
「いいか、雷、ほむら!
あんた等の力の使い方しだいではこんな事も出来るんや、よう見ときや!
そいから、色! あんたの考えたお遊び! アレをやりますえ!」
「!
お、お師匠様、アレはうちのしょーもない思いつきで…」
「四の五のいっとる場合や無い!
…大丈夫、うちも一緒に手伝いますよって。 …それに、今日と言う日だからこそ、卦が良いんどっせ!」
「…は、はい!」
「うん、良い返事や。
さて、うちらが術くみ上げるのに時間がかかりますよって、その間のうちらの護衛をあんたらにお願いします」
「…えっと、ボクはどうしましょう?
あんまりこの状況はお役に立ちませんけど…」
「みこと、あんたの…『祝福する者』でしたっけ? 回復に専念! 極近づいたものだけ刈り取っていけばよろしおす!
ようはTPOと言うやつどすえ」
「は、はい!」
「では、皆さん! きばりやっしゃ!」
(御神たちの聖夜 中篇 了)
「…ところで…、そもそも御霊ってどんなやつらだっけ?」
「ちょっ!」
ほむらの微妙に空気を読まない発言にみことは思考が停止しかける。
(わが双子の妹ながら時々何を言ってるんだか…)
「あはは…、ほむららしいなぁ」
「だ、だってぇ、敵ならぶっ潰せば良いだけだけど、なんか、ばあちゃんもあの大男も顔見知りっぽいじゃんかよぉ」
場違いに笑う雷と、そんな雷の笑いにちょっと反論してみるほむら、二人ともあまり空気を読まない子だったなぁ、とみことは思ってみる。
大体三人でいるとこんな感じで進んでしまうのでみことがまとめ役、というかお姉さん役になるのだった。
今回違うのは、色がいる事で、恐る恐ると言った感じでほむらの疑問に答える。
「…え、えっと…御霊というのんは…。
むか~し、えっと、平安の頃に御門家が出来たんどすが、御門の理念に…ひいては御神としての生き方に疑問を持った人たちが離反して作り上げた人たちやそうです…」
「御神としての生き方?」
「御神は人ならざる力を持ちながら、人の中に紛れて生き、事あらば立ち上がるべき存在、って父さんは言ってたかな?」
「雷君、さっすが、御神の一族の総代の息子だね!
って言うかほむらちゃん、父さんも時々言ってるんだけど?」
ある意味、墓穴を掘ったほむらは慌てて質問を変える。
「え、えっと、じゃあ、御霊の目的ってなんだ?」
「は、はい、御霊は…お師匠様の言うんには、人ならざる力は人間の上に立つ為の神の力だ、と。
せやから、この日本を御霊の思うがままの国にする為に国家転覆を図っているそうどす」
「なんか大げさな事言ってるなぁ~」
「まぁ一応、この御島は日本に点在する龍穴、要の一つだしねぇ」
「だから昔、…え~っと、確か江戸時代ぐらいに御鏡家から分家して御島家を作って住まわせたって言ってたかな?」
「あ、そうなんだ。
しっかし、だからって一人で勝ち目なんてあるのか?
ばあちゃんは良く知らないけど親父も光輝おじさんも戦闘のプロだぜ?」
「…お師匠様も御門家の長、大御門の称号は伊達やありまへん。
けど、あちらさんにも勝算はあるんでしょうなぁ」
子供たちの疑問はすぐに解けた。
御霊火呼麻呂がなにやら唱えると黒雲の大きさを無視して、中から次々と魑魅魍魎の類がぞろぞろと出現してきたのだ。」
「やれやれ、いきなり『百鬼夜行』とは大盤振る舞いどすなぁ」
「なーに、まとめてなぎ払うのみ!」
「…まずは出方見てみますか」
鋼刃が真っ先に飛び出し、海岸に着いた魑魅魍魎の先陣を切り伏せる。
光輝もそれに続き、“力”を発動、右手の手刀の光が伸び剣状に、左手から連続で光弾を発射していく、しかも、事前に御名神家の“複写”で鋼刃の体術を得ていた。
ツネも複数の式神を操りながら、接近する妖を消滅させていた。
「すっげえな…本当にオレ達出番無しだな」
「だね。
ところで色ちゃん、ツネおばあちゃんのアレは何?」
アレとは妖の消滅の事だ。
「…あ、あれは、五行の応用おす…。
五行ゆうんは、分かります?」
「…えっと、木火土金水のことだよね?確か、御門にもそれぞれあったよね」
「はい、御門の場合、得意な力を現します。
それで…、五行は、簡単に言うと『相生』『相剋』で成り立ちます。
なので、全ての力を使いこなせる空御門は五行に乗っ取って、妖の属性を相剋して存在できなくできるんおす」
理解の程度は異なるものの、三人はうなずく。
ふと雷は思いついて聞いてみる。
「凄いな…えっと、色はアレできるの?」
「と、とととととっとんでもあらしまへん!
あ、アレをあんなに早く属性を読んで術を組んで実戦レベルで使えるなんて、うちはまだまだ出来はしません!
そういう意味で、『使い系』の能力者は実践的なんおす」
ここで言う『使い系』の能力とは光輝の“光”、雷の“雷”、ほむらの“炎”等、元素そのものを使いこなす力で、単一属性ながら身体を動かすのと同様自然に、しかも幅広く応用の利く能力なのである。
「しかも、お師匠様は放った式でも似たことをしてますんや」
「どういう事だ?」
「見てください。
飛び交う式の中、一際大きい物がありますやろ?
あれは、“式王子”言いまして、各属性を持たせた他の式を集中管理して相剋してるんおす」
「なんか凄いことしてるんだねぇ」
「それじゃ、もう勝ったも同然だな」
「…いや、そうも言っていられないみたいだ」
ほむらが楽観するのを、雷がさえぎる。
見れば、魑魅魍魎の群れのほとんどは上空からの攻撃に切り替えてきていた。
こうなると、接近戦が主で、気合の一閃で刀身から発生する衝撃波も射程に限度があり連発しづらい。 そのため鋼刃は圧倒的に不利になる。
光輝の光弾、光線も距離を取られると命中精度が落ちてしまう。
現状まともに対応できるのはツネだけになっていた。
「相手はあの黒雲に乗っている上、妖を容赦なく盾に使ってます」
「しかもどんどん湧いてきてるしな…あれ、火呼麻呂とか言うやつ一人の力じゃ無いだろ?」
ほむらの言うとおり、いくら強力な術者であろうと一人の術者で既に千を越える魑魅魍魎は出現できない。
みことはなんとなく思いついた事を口にする。
「…あれ、多分黒雲を中継して別の場所でたくさんの人が呼び出してるんじゃ無いかな?」
「…だとしたらキリが無いな…」
その時子供たちの背後に気配が二人。
「あっれ~、以外に手こずってるねぇ」
「え?楓ちゃん…と、霞ちゃん?!」
やってきたのは楓と霞だった。
「いや、さすがにあんだけドンパチやってれば気がつくしねぇ~。
パーティーの時間も迫ってるし、お手伝いに来たんだけど…あたし、あんまり約に立たないかな?」
「ミーちゃんが怖がってるから早く終わらせたい…」
子供たちがどうしたものかと考えていると、ツネが子供たちを呼んだ。
「さて、埒があきまへんよって、裏技をつかいますえ。
とりあえず、鋼刃! とっとと、本気をだしなはれ!」
「!
し、しかし、あれは後のことが…」
「やかましい!
そこの所もフォローするよってとっととやりい!
そいから、光輝! 今ある式王子にありったけの力を込めぇ!」
「は、はい!」
「いいか、雷、ほむら!
あんた等の力の使い方しだいではこんな事も出来るんや、よう見ときや!
そいから、色! あんたの考えたお遊び! アレをやりますえ!」
「!
お、お師匠様、アレはうちのしょーもない思いつきで…」
「四の五のいっとる場合や無い!
…大丈夫、うちも一緒に手伝いますよって。 …それに、今日と言う日だからこそ、卦が良いんどっせ!」
「…は、はい!」
「うん、良い返事や。
さて、うちらが術くみ上げるのに時間がかかりますよって、その間のうちらの護衛をあんたらにお願いします」
「…えっと、ボクはどうしましょう?
あんまりこの状況はお役に立ちませんけど…」
「みこと、あんたの…『祝福する者』でしたっけ? 回復に専念! 極近づいたものだけ刈り取っていけばよろしおす!
ようはTPOと言うやつどすえ」
「は、はい!」
「では、皆さん! きばりやっしゃ!」
(御神たちの聖夜 中篇 了)
Comment
[1020] Re: 御神たちの聖夜 中篇
すみません、また時間切れで続きます…こんなんばっかし…(汗
明日、とは行かないかもですが、次こそ終わる…はずですのでお許し下さいm(_ _)m
明日、とは行かないかもですが、次こそ終わる…はずですのでお許し下さいm(_ _)m