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御名神亭の業務日誌

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御神たちの聖夜 後編

御名神亭の業務日誌

「では、皆さん! きばりやっしゃ!」

 ツネの号令で御神が一丸となって動き出す。

「はぁぁぁぁぁ……ふんっ!!」

 鋼刃が気合を込めると鋼刃の身体に変化が起こる。
 額に赤い玉が出現、筋肉は盛り上がり浅黒く、一回り大きく、あまつさえ、両の腕の下から更に腕が。

「おおぉぉぉぉぉぉっ!!」

 咆哮と共に飛び上がると易々と空中の魍魎の只中に飛び込み引き裂く。 引き裂く!

「お、親父…」 「父さん?!」
「あれが、鋼刃の隠し玉、『荒神化』じゃ。
 まぁ、もっとも戦う修羅と化すんで理性は期待せん方がいいがのぉ」
「そ、それってどうするんだよ!」
「それは後じゃ!
 それより、光輝を見よ!」

 光輝は式王子にありったけの“光”を込める。
 式王子はしだいに膨張し、出現する“仏”の姿。
 “仏”がうっすらと目を開けると日の傾きかけた海岸に柔らかい光が照らされる。
 魍魎たちの勢いが薄れるのが感じられる。

「…ほう、大日如来になりはったか…。
 よう見とき、『使い系』と『空の式王子』をあわせれば、神霊の召喚も可能…もっとも本物ではないし、土地や個人の資質で一定ではありまへんので、使いにくいのですけどな」
「「…はぁ…」」

 一同呆気に取られるしかなかったが、それは敵、御霊火呼麻呂(ごりょう ひこまろ)も同じだった。

「くぅぅ…御神ども…御門ツネ!、どこまで邪魔をする!
 …だがしかし!だがしかーし! 我の背後に控える御霊12人の術者の力を侮るなよ!」

 火呼麻呂の乗る黒雲から更に魍魎が出現、数多の魍魎が一本の槍のようにツネの元へ一直線に突き刺さる。

 ドスッ!

「やったか?」

 確かに魍魎の槍はツネを貫いた…ように見えたが次第に陽炎のように消えていく。

「なにっ!」

 ツネたちは違う場所にいた。

「…時間は有ったから、レベルが高くて直接本人に幻術はかけれないけど、私達とあなたの間の空間を屈曲させた…。
 これはオマケの…爆龍水!!」

 魍魎の槍の突き刺さった地面から水柱が噴出し魍魎どもを吹き飛ばす。
 その後も御神の子供たちの活躍と荒神化した鋼刃により徐々に優勢に傾いていた。
 そして、ツネと色の術は完成する。

「「──Rudolph the Red-Nosed Reindeer!」」
「…ふぅ、終わりましたえ」

 ……だが、何もおこらない。
 すぐにほむらがつっこむ。

「ちょっ!ばあちゃん、何にもおこらねぇじゃんよ!」
「まさか失敗?」
「…えっと、良く分からないんだけど、最後…英語??」
「「はぁ?!」」

 霞の冷静なつっこみと言うか疑問に周りが固まりかける、敵である火呼麻呂すらも。

「…ふ、ふふふっ!
 呪術の最高峰に位置する大御門ともあろうものがついにトチ狂ったか!」

 火呼麻呂は勝利を確信し、色は俯いて黙り込んでいる。
 しかしツネは術を組み上げた疲労はあるものの、余裕の顔をしていた。

「ふん…術は完成しましたえ。
 ただ寄り道があるよって、もう少しみんながんばってもらいますけどなぁ」

 ツネがそういい終わる前にふっと周りが暗くなっていく。

「なんや光輝、今からが踏ん張りどころですのに」

 見れば、上空にずっと浮かんでいた大日如来がすぅっと空に消えていった。 後に残るのは式王子の札だった紙切れのみ。
 少し不満そうにツネが言うものの、光輝の方は汗だくでヒザを付いて粗い息をしていた。

「…ぜぇ…ぜぇ…ツネ様、無茶を言わんで下さい…。
 エンジンをフル回転でずっと回してきたようなものなんですから…」
「そら、紛い物とはいえ、神霊を人の力で呼び出すんですからそのくらいはあたりまえですやん。
 とは言え、光輝が使えん上、夜になってくるとあちらさんに有利おす。
 ともかく、もう少しだけ踏ん張っておくれやす」
「あ、うちも出来るだけがんばります」
「色ちゃん、大きな術を使った後で大丈夫?」
「う、うん。
 みんながんばってるし…」
「じゃ、じゃあもう少しがんばってね」
「…これは四の五の言ってられないか…」

 独り言のようにつぶやく雷が普段目を隠すぐらいに伸ばした前髪を振り上げる。
 雰囲気は普段と一変し、口元に少々不遜な笑みが現れる。
 今年の夏の水泳大会以降、雷に現れた変化だった。

「…ふぅ…。
 久々に暴れるか…」
「あ~、いぢめっこの雷君だぁ」
「そうか?
 普段のボーっとしてるより、あっちの方がワイルドでいいじゃないか」
「ほむらちゃんは良いけど、ボクはあんまり良くないんだよぉ~」

 双子とはいえ好みは違うようである。

「どうでもええでっしゃろ。
 さて、もうひとふん張りですえ」
「「はい!」」

 それから三十分、日は完全に沈み形勢はかなり不利になっていた。

「…さ、さすがにヤバイな…」
「雷がそう言う事いうな!」
「…ボ、ボクも限界かも…」

 回復役のみことの“祝福するもの”のオーラも右手にうっすら光るほどになっていた。

「ふはははっ!
 今宵でこの日の本は我らが御霊が支配するのだ!」
「……間に合いましたえ…」

 ツネが指差す方角から現れた赤い光点は次第に近づき…ツネと色以外は驚愕する。

   シャンシャンシャン……ドカッ!……シャンシャンシャン…

 軽やかな鈴の音を響かせ、走った後に光の粒子を振りまくそれは、九頭立てのトナカイの引くソリ。 そこに乗るのは黒と茶色の服を着た白いひげの恰幅の良い老人。傍らには大きな袋を積んでいた。
 それが、火呼麻呂の乗った黒雲目掛けて体当たり。
 黒雲は霧散し、吹き飛ばされた火呼麻呂は追い討ちのように鋼刃の渾身の一撃を食らい一同の近くの砂浜にめり込む。

 その後、周囲を飛び回り光の粒子降り注ぐと、魍魎たちは雪が溶ける様に消えてしまった。

「…え、え~っとあれは何?」

 いや、みことはなんとなく彼の正体に気づいていたものの、信じたくない気もするのでやっぱり色に聞いてみる。

「え、えっと、あれはキリスト教における聖人の一人、『聖(セント)・ニコラウス』おす…」
「ほっほっほっ…」

 一同の近くにソリを止めた老人が明るい笑顔で笑う。
 すると、今まで黒と茶色の服がすっと、赤い服に白いボアの付いた服に変わる。
 ツネがボソリと補足する。

「いわゆる、サンタクロースおすな」
「「さ、サンタクロースっ?!」」
「ほっほっほっ」

 一同が驚いて固まる中、平然と笑うサンタクロース。
 それを打ち破る咆哮。

「がぁあああああああぁぁぁっ!!」
「やばい!急に敵が居なくなって親父が暴走してるんじゃねぇ?」
「どどど、どうするんだよぉ~」

 こちらに気がついて破壊衝動を引き連れて駆け寄る鋼刃。
 それを見てツネがサンタクロースに声をかける。

「おたの申したアレをお願いします!」
「ほっほ、Merry Christmas!」

 サンタクロースが傍らの袋の口を開けると中から出てきたのはなんと、御剣沙夜、御名神凪砂、そして灰藤玄太郎だった。

「「お母さん?!」」 「…っ!」 「玄太郎?!」

 ほむらとみこと、雷、そして楓が再度驚く。

「あいたたた…いきなりなんだってんだよ!」
「げんたろー!!」
「うわっ!楓か?!」

 着地に失敗してすっ転ぶ玄太郎に楓が飛びつく。
 玄太郎は何が起こったのか理解していない。

 一方、沙夜と凪砂は早かった。
 迫ってくる鋼刃に対し、凪砂は“凪”を発動、鋼刃の荒神化を解除。
 しかし、まだ止まらない鋼刃の真正面に立った沙夜がどこからか出したハリセンを一閃。

「いい加減に止まりなさい!」

   スパーーーーン!

「はぶっ!」

 ようやく鋼刃は停止した。

「…すっげ…」
「お母さん…」

 二人の娘はたまに父を諌める母は見ていたが、ここまでの物は見たことが無かった。

「二人とも、沙夜は昔、荒神化したままのアレを止めた事があるんえ」
「い、嫌だわツネ様。昔のはなしじゃ無いですか」

 改めて、母は強いと思ったほむらとみことだった。

「…さて、終わりましたかな?」
「そうどすな、結局最後に光輝さんは役にたたしませんでしたけど…」
「ツネ様ぁ~、私もがんばったんですけどねぇ。
 まぁ、良いでしょう。 きっと後始末は私の役目でしょうしね」
「ほっほっ、良くわかってるやおまへんか。
 さて、聖ニコラウス殿、いやサンタクロース殿、今宵はご無理をお聞き頂き有難うございます。
 重ね重ねご無礼ではありますが、そこに埋まってますアホを貴国近くの森ににでも捨てておいて貰えませんでしょうか?」

 丁重に頭を下げるツネの言葉を聞き入れ、サンタクロースは袋の中に火呼麻呂を放り込むと、ソリに乗せトナカイに合図を送る。

「はいよぅっ!
 Merry Christmas!」

 軽やかな鈴の音を響かせソリは空中を滑るように進んでいく。
 くるりと御島の周りを回ると北の国へと帰っていった。
 そして上空から雪がちらほらと降ってきた。

「わぁ~、雪だぁ!」
「ほほ、サンタクロース殿の粋なプレゼントおすなぁ」
「…俺は何がなにやらなんだが…」
「玄太郎はおまけじゃない?」
「俺はオマケでこんなとこまで連れてこられたんかい!」
「玄太郎…メリークリスマス!」
「…まぁ、良いか…聖夜の奇跡にしちゃ趣味が悪い気もするがな…」

 全てが終わった一同を呼ぶ声。 祭だった。

「ぉお~い!
 みんな終わったか~
 今ならクリスマスパーティーも間に合うでぇ~!」
「あ、もうパーティー始まってるんだ!」
「オレもう、お腹ペコペコだぁ~」
「あ、あの、お師匠様もいかがですか?」
「まぁ、たまには基督教のお祭も悪くはないでっしゃろ」
「…もっとも、こういったのは日本だけみたいですけどね…」

 それぞれ思い思いに会場に向かっていく。
 聖夜の夜はもう少し続くようだった。

 (御神たちの聖夜 後編 了)

Comment

[1021] Re: 御神たちの聖夜 後編
 とりあえず、クリスマス企画の終了です。 って、めっさ遅れましたけど…(汗

 まぁ、無茶苦茶ですね(笑
 とりあえず超絶バトルは書いてて気持ち良いです。 後に繋げ辛くなりますけど。
 なんにせよ、稚拙ながら、皆様に楽しんでもらえれば幸いです。

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水上雷太

Author:水上雷太
『水上雷太』
 「全スポ会会長」
 「御名神亭やとわれ店長」
 「サイト管理人」
 様々な“自称”を使い分ける男。ぶっちゃけ三十路ヲタ(ぷ

 ブログ開設4年目に突入し、何を血迷ったかサイトまで開設する。 どこまで突き進む気だ?

『御剣みこと&ほむら』
 御名神亭の店員。双子の姉妹。
 一見中○生並のコンパクトボディだが18才以上(笑
 一人称が「ボク」と「オレ」だが女の子。
 ほむらはふた○りだが女の子!

『Dr.ノーザンウェスト』
 御名神亭に住み着く、謎の「萌え学」講師。
 某キ○○イ博士に似ているのはただの噂(笑
『ワイルド=エルザ』
 通称「ワルザ」Dr.が某所から設計図を入手して作り上げたモエロイド。
 語尾はお約束の「ロボ。」(笑

 ここは、上記メンバーでお送りするエンターテイメントサイトである。

 リンク&アンリンクはフリーです。ご一報頂けると、リンクを貼り返します(笑





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