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御名神亭の業務日誌

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『御島学園 水泳大会事件』 転  

御名神亭の業務日誌

 御島学園の室内温水プールは二ヶ所ある。
 幼、小用の浅いプール付の短水路(25m)と、中、高、大、院用の長水路(50m)である。
 それぞれに公式大会にも使える観客席と電光掲示板が備え付けてあり、今日の水泳大会は中、高合同で行われるのである。

「───と言うわけで、皆さん怪我や事故の無いように、練習での実力を発揮するように頑張って下さい」
「以上、理事長代理、高等部生徒会長、御島唯(みしま ゆい)さんの開会の挨拶を終わります。
 それでは、第一競技の中等部女子背泳ぎの選手の皆さんは───」

「ふぅ、何とか唯姉ぇの挨拶までには間に合ったな」
「そうだね。 合同だから、遅れたなんて後で知れたら怒られちゃうよ」

 遅れてプールに来たほむらとみこと、それに雷であったが、実行委員会はプール側、生徒は2階の観客席側なのが幸いして潜り込む事に成功した…かに見えたが…。

コラ!御名神!御剣!
「「ひゃうっ!」」
「わっ!」

 突然背後から怒られて首をすくめる3人。
 だが、それ以上何も言われず、むしろ背後から聞こえるのは噛み殺した笑い声。

っぷ、ぷははっ」
「って、楓ちゃん!?」
「何だよ、楓姉ちゃんかよ…ビックリしたなぁ…」

 背後で笑っているのは女子としては大柄で筋肉質な身体に競泳型スクール水着を着て、腰に『執行部』の札を付けた、御木楓(みき かえで)

「やぁ、楓。
 えっと、執行部の仕事も大変だねぇ」
「まぁね、なんせうちはこう言う所だからね、あたしらみたいなのも借り出される訳」

 御島学園の生徒会は中、高等の各等部に存在し、かなり大きな権限を持っている。
 また、異能力者が多い事で起こるトラブルの解決に直属組織の『執行部』を持って警戒に当たるのである。

「ま、遅れた事は唯にはナイショにしとくから安心しな」
「さすが楓姉ちゃんは話が分かる。
 って、そういやぁ、何で唯姉ぇが挨拶してんだ?」
「ん?
 あぁ、今日は理事長がお偉いさんとの用事とかで外出しててね。
 んで、生徒会長で理事長の孫の唯が挨拶って訳」
「なるほどねぇ。
 …でも、零ちゃんは副会長だし、楓ちゃんは執行部部長。
 うちの親戚ばっかりで良いのかなぁ~」
「ま、他にやり手も少ないしねぇ。
 と、言うかみことやほむら、それに雷君だって、今は一年だからやってないけど、来年から中等部の執行部候補だろ?
 祭のやつも会計候補だって言われてる筈だし」

 御島学園の生徒会の権限の強力さを物語るエピソードに次期生徒会メンバーの指名制が挙げられる。
 ちなみに、生徒会長の御島唯と、副会長の御島零(みしま れい)は学園創立者にして理事長の孫で、更に、中高6年連続生徒会メンバーで有名なのである。

「げー、めんどくせぇよぉ~」
「うわ~、そうなんだぁ~」

 寝耳に水で驚くほむらとみことに対して雷はいつもどおりだった。

「あれ?雷君は驚かないね」
「まぁ、そんな気はしてたからね」
「だけど、楓ちゃんはよく執行部部長やれるねぇ、関心しちゃうよぉ」
「ま、あたしは小学校の時から玄太郎の手伝いで荒事をしてるからね
 経験値が違うのさっ」

 胸を張って威張ってみせる楓。
 ただでさえ大きな胸が更に強調される。

…ふん、勝手に付いて行っただけじゃんか…

 ぼそっと言ったほむらの言葉を見逃さない楓。

「な~ん~だって~!」

   グリグリ

ぁ痛だ! 痛だだだっ…止め、止めろぉ~~~!
 こんの、牛ちち~~~!」

 楓はほむらの背後に回り込み、ゲンコツでこめかみを力一杯グリグリする。必殺の“ウメボシ”だ。
 しかも、密着したのでほむらの背中に楓の胸の感触が伝わる。
 ほむらにとって、それも癪に障るのだ。

「だ~れ~が、牛ちちだぁ!」

 楓が余計力を込める。
 が、適当な所で開放するのであった。

「あ痛た~~~~…。」
「ま、今日はこの位で勘弁しとこうかな。
 …それはともかく、いくらうちの学校がスクール水着か、競泳水着で自由でも前垂れ付とは…お子様だねぇ~」
「う゛…」
「楓ちゃん、これには事情が…」
「ま、ほむらの事はあたしだって知ってるよ。
 大変だとは思うけど、牛ちちって言ったお返し。
 …っと、そろそろ仕事に戻らなきゃ。 じゃあねっ!」

 そう言うと楓は立ち去っていった。

「うぅ~、雷ぃ~」
「まぁまぁ、楓も本気じゃないんだから。
 それに、コレを着たほむらは可愛いんだから、気にしない」
「まぁ、雷が言うなら…」

 ほむらはちょっと釈然としないものを感じながらも、雷の言うことだからと気にしないことにした。

「さぁ、雷くんもほむらちゃんも水泳大会を楽しもうよ。
 ボク達の出番もあるしね」
「うん」
「おぅ、そうだな」


 そうして、しばらくは順調に大会のプログラムは進んでいく。
 異変の始まりは、客席をうろうろしている祭だった。

「あれ? 祭ちゃん、どうしたのぉ。」

 声をかけたみことに気づいて、祭がやってくる。

「なぁ、さくらのやつ見てないか?」
「さくら?」
「さくらちゃんって、水泳部のホープの?」 
「せや、うちのクラスで水泳部員のさくらや。
 もうすぐ出番やっちゅうにどこにもおらんのや。」
「どこにもだって?」
「おかしいねぇ。」

 三人が悩んでいると、雷が口を挟む。

「ねぇ祭、着替えの時に居たんじゃないの?」
「いや、さくらのやつは水着が部室にあるから着替えん時は別行動やねん。
 昨日も、遅ぉまで居残り練習してたぐらいやからなぁ」
「…居残りねぇ…今日は誰か見てる?」
「あぁ、うちのクラスでさくらの親友が見てるで。
 なんや、ぼーっとしてた言うて心配しとったけどなぁ。」
「…うーん、嫌な予感がするなぁ…」

 雷が珍しく顔をしかめて考え込んでいるとプールの方から悲鳴が上がった。

キャーーッ!」  「うひょーーっ!
「ヤダッ! あの娘何で裸なのよ!?」

 見れば一人の少女が素っ裸でプールサイドをふらふらと歩いていた。

さくらっ!

 祭が観客席の手すりから乗り出さんばかりの勢いで叫ぶ。

「何だってっ!?」
「さくらちゃんどうしちゃったの!?」
「あれは!拙い!

 驚く二人と、普段ぼーっとしている雷が珍しく鋭く叫ぶ。
 前髪に隠された奥の眼光が鋭くなる。

「おぅっ!」
「わかったっ!」

 雷の声にほむらとみことが観客席の手すりを乗り越えて階下のプールサイドに飛び出す。
 祭は状況が掴めていない。

、なんやぁ!?」
「祭!ここは危ない!
 非能力者を非難させろ!」

 そう言うと、祭の返事を待たずに、雷も手すりを乗り越えて飛び降りる。
 普段、ぼーっとして捕らえどころのない雷の豹変、特にいつも“祭ちゃん”と呼ぶ雷が“祭”と呼ぶ事に混乱するばかりだった。

 一方、裸のさくらと呼ばれる少女は流石にと言うか、当然と言うか、教師に止められようとしていた。

「こ、コラ!何をしている!」
「ヤバイ!離れろ!

 いち早くほむらが叫ぶが、男性教師がさくらの肩に触れた途端、その手がずぶりっと少女に埋まり、そのまま、全身がの中に飲み込まれる。

ぎゃあぁ…

 成人男性一人分を飲み込んだにも関わらず、少女の容量は変わらない。
 ただ、少女の表面に波紋が波打っていた。

「ちぃ…遅かったかっ!
 御剣炎の名において、炎よ!我に従え!

 叫ぶほむらの両手に炎が宿る。
 そのままほむらはぶつかるように殴りかかる。

ごぁあああぁっ!

   じゅうぅぅぅぅっ

 少女のものとは思えない叫びと共に、大量の水分が蒸発する音が重なる。
 が、炎に身を焼かれながらも、ほむらごとプールへと落ちていく。

 どっぽーーーん!

ほむらちゃん!

 次の瞬間、プールが二人が落ちた飛沫だけではない蠢きを見せ、プールサイドに居た生徒や教師を、触手の様な粘液を伸ばしプールに引きずり込み始める。

拙い!
 みこと! あれは恐らく魔法生物の類だ!
 唯!戦えない奴を避難させろ!


 後から降りてきた雷がプール全体に響く怒声で叫ぶ。
 その姿は普段下ろしている前髪が後ろに流れ、光の加減によって銀髪にも見えるが、纏う気そのものが違っていた

 そして、事態の異変に、高等部生徒会長、御島唯はマイクを通して避難を勧告した。

「非常事態が発生しました。
 生徒の皆さんは先生、執行部の指示に従って冷静に避難して下さい」

 多少混乱はしているものの、非日常と隣り合わせの生徒達は避難を開始する。
 それを見て、隣に影のように寄り添う、副会長にして、双子の妹の御島零に指示する。

「零、至急アレの解析を。
 これは私のカンだけど、過去に御神に関わっていないかも調べて!」
「…わかった…。」

 零は無表情に傍らのノートPCを操作する。
 その速度は常人のそれを遥かに超えていた。


御剣命の名において、“刈り取る者”よ!

 みことの叫びで、みことの左半身に暗いオーラが湧き出る。
 そして、左手をプールのほむらが落ちた方向に振り下ろすと、暗いオーラは刃のように水面を切り裂き、ほむらに纏わりついた粘液を“殺した”
 そこに雷が飛び込み、再び周りの粘液が覆う前にほむらを救出する。

 ほむらの姿はスクール水着は溶け始めていてボロボロで、生きてはいるものの、精気は乏しく、かなり衰弱しているようだった。

“祝福する者”よ!

 みことが再び叫ぶと、今度は右半身に明るいオーラが湧き出る。
 そして、右手をほむらにかざすと、オーラはほむらを包み、ほむらの顔に精気が戻り、飲んでしまったプールの水を吐き出した。

「ほむらちゃん!大丈夫?」
ぐぼっ! がほっ…げほげほ…。
 サンキューみこと、くっそっ!だいぶ水飲んじまったぜ…」
「ほむら、みこと、まだ終わってないぞ。
 …敵はプール一杯の粘液状の魔法生物…いや、呪詛の類か。
 …やれるか?」
「お、おぅ。
 なぁ、みこと。
 雷が本気モードになってるって事は…

うん。
 結構気合入れないといけないねぇ…


 ほむらとみことが雷の変貌に気がついていると、そこに割り込む声があった。

「かなり厄介な相手だねぇ」

 執行部部長、御木楓であった。

「楓姉ちゃん!」
「楓ちゃん!
 執行部は避難誘導じゃあ…」
「そいつは一段落したし、あたし以外の執行部員で十分。
 それより…あんな、ぶよぶよスライムじゃあ、あたしの“剛力”は役に立たない、と言うか、接近戦は取り込まれる。
 しかも、植物で水を吸ってやろうとしたら…残念ながら吸水速度より早い侵食でおじゃん。
 雷君の電撃は下手すると取り込まれた人間に悪影響が出るからダメ。
 ほむらの炎や、みことの断命もあんだけ大量だと一部が精一杯だろうし…見てみな、相手は補給も出来るみたいだ」

 見れば、取り込まれた人、男は意識を持たされたままじわじわ侵食、融解され、女は水着は既に溶かされ、粘液があらゆる部分を犯されているようだった。

「ひどい…」
「恐らく、あらゆる物質だけじゃなく、強い感情も糧にしているようだな…」

 みことは目をそむけはしなかったものの顔をしかめ、雷は低く呟く。
 ほむらは拳を握り締め、俯いたまま呟く。

「…さくらって言ったけ?
 オレがプールに引き込まれた直後に溶けて消えて…、その後すぐプールの水が粘って纏わりついてきやがった…。
 そうしたら、すっげぇ嘆きが聞こえた気がした…たぶん、呪詛の最初の種にされる為に…犯されたんだ…。
 だけど…何でそんな事する奴がこの学園に入り込めるんだよ!ここにゃあ、退魔の結界が張ってあるんだろ?」

 ほむらが感情的に疑問を吐き出す。最後の方は怒鳴りに近かった。
 それに答えるのはスピーカーを通す唯の声。

「それは、この規模での完全な結界は無理だからです。
 たとえ、世界を祈りで支えると言われる、法王クラス、我が国にも御一方居ますが…無理なんです。
 ともかく、大きな結界は網のような物。
 大きな厄災を防ごうとすると、小さい邪は通り抜けてしまう…その上、この地は龍脈の吹き出す地、龍穴の上に立っていますから…それを逆利用されたのでしょう」
「で、こいつの正体は分かったのか?」

 雷は話を急がせるように短く言った。
 その時、プールの粘液が盛り上がり、かろうじて顔と分かるような形を取ると、その口らしき部分から陰鬱な声が漏れ出す。

ごぁぁぁ…ニク…い…。 ミ…KA…み…。 オロ…かナ…キレい…ごト…わ、スベTE…ノみ…こム…

「…こいつ、今、御神とか言わなかったか?」
「…たぶん…」

 ほむらとみことは“御神”の名が出た事に驚く。
 雷は何かを感じて叫ぶ。

零!
 御神とこの粘液で該当する例を検索っ!


 言い終わるとほぼ同時にスピーカーから唯の隣に居る筈の零の声が響く。

「…検索結果。
 20年前に御名神光輝(みなかみ こうき)氏が関わった、貪る邪神の信奉者が起こした事件。
 そこに同様のモノがあるわ…」
「で、弱点は?」
「…それは…、一応、熱に弱いらしいけど、その時はここまで大量じゃなかった…」

 話を聞いた雷は舌打ちしつつ、続ける。

「唯、現状できる対策はっ!」
「雷君、ほむらは炎でかく乱、みことが取り込まれた人たちの周りを断命して切り開いて、楓の蔓鞭で救出して敵の補給を止める」

 唯は即答した。

「了解。 二人は分析を続けて、何か分かったら報告してくれ!
 みんな行くぞ!
 御名神雷の名において、御剣炎の力を借り受ける! 炎よ!我に従え!

 雷が両手に炎を纏うと、四人は散開する。
 粘液も邪魔者を排除しようと蠢く。
 
 だが、解決策はいまだ無いままだった…。

 (『御島学園 水泳大会事件』 転 了)

Comment

[774] Re: 『御島学園 水泳大会事件』 転  
 いつもの事ながら…長い(汗
 しかも今回エロ無し(大汗

 しかし、『灰籐シリーズ』の楓が出てくるとは思わなかったでしょ?(笑
 まぁ、こちらとしては、祭の方がサプライズなんですがね(苦笑
 名前どおりでしゃばり、つーか、典型的な関西系キャラですから…そこ!容姿はマ○ラブの委員長とか、コ○パの…とか言わない(ぉ
 と、言うか、それを言ったら、元から脳内にあったとはいえ、世界観は塵○魔京で、学園はネ○ま!と似てる支那ー(こら

 ともかく、もう少しお付き合い下さい。

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水上雷太

Author:水上雷太
『水上雷太』
 「全スポ会会長」
 「御名神亭やとわれ店長」
 「サイト管理人」
 様々な“自称”を使い分ける男。ぶっちゃけ三十路ヲタ(ぷ

 ブログ開設4年目に突入し、何を血迷ったかサイトまで開設する。 どこまで突き進む気だ?

『御剣みこと&ほむら』
 御名神亭の店員。双子の姉妹。
 一見中○生並のコンパクトボディだが18才以上(笑
 一人称が「ボク」と「オレ」だが女の子。
 ほむらはふた○りだが女の子!

『Dr.ノーザンウェスト』
 御名神亭に住み着く、謎の「萌え学」講師。
 某キ○○イ博士に似ているのはただの噂(笑
『ワイルド=エルザ』
 通称「ワルザ」Dr.が某所から設計図を入手して作り上げたモエロイド。
 語尾はお約束の「ロボ。」(笑

 ここは、上記メンバーでお送りするエンターテイメントサイトである。

 リンク&アンリンクはフリーです。ご一報頂けると、リンクを貼り返します(笑





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