SS 『鬼哭麺』第七話 「鬼眼冷麺」前編
御名神亭の業務日誌
『食の大黄金時代にして、大暗黒時代にして、大混乱時代』のアーカムシティーに今宵、新しい名所が登場する。
覇道財閥が技術の粋を集めて建造した料理人達の殿堂、その名も『キッチンスタジアム』。外見は屋根のある古代ローマのコロシアムに似て、内部は左右対称に高級レストランにも負けない最新の厨房機器が並び、和洋中あらゆる調理がおこなえる様に設えてある。
そして、中央のキッチンをぐるりと囲むように客席が配置、更にはTV、ネット等の中継設備も整っている。
既に客席は満席。会場内は熱気に包まれていた。
「皆さん!『キッチンスタジアム』へようこそ!私がこのキッチンスタジアムの主宰、『ナハツェーラー』と申します!」
古風で豪奢な衣装を着たナハツェーラーと名乗る老齢の男が、会場の中央でマイク片手に大仰な手振りで朗々と喋っている。
「さあ!今宵、キッチンスタジアムにて、初めて執り行われる対戦は…皆様も一度はお聞きになられたであろう!中華料理の名店『青雲飯店』を相手に屋台一つで立ち向かう男の噂を!今宵はその全てに決着を付ける為に二人の料理人を召喚した!」
「先ずは、『青雲飯店アーカム一号店』店長にして中華料理会にその人ありと言われた、若き鬼才!『鬼眼冷麺』リュウ・ホージュン!」
ナハツェーラーが会場東側の扉を指すと盛大なスモークと共に扉が開き、ホージュンが登場する。
「では、続いて!屋台一つで青雲飯店に挑む男!その正体は、一度は死亡したと噂された元青雲飯店の料理人!中華料理の中でも神秘の『内家』の技を揮う男!『紫電麺』コン・タオロー!」
同じように、西側の扉からはタオローが登場する。
「そして、今宵の審査員もアーカムで名を轟かす者達ばかり、御紹介しよう!
『ファントムバーガー』より、店長のサイス・マスター氏
『燦月食品』より、開発部長の諸井女史
我らが『美食クラブ イノヴェルチ』より、麗しの姫君『美食の女王』リァノーン様
『皇路料理専門学園』より、講師にして調味料の権威、Dr.都
『ブラックリッチ』グループの全てを支配する男、マスターテリオン氏と『料理指南(レシピ)書』の精霊にして秘書のエセルドレーダ
ブラックリッチの中でも選りすぐりの七店『アンナクロース』より、金箔料理のアウグストゥス氏
同じくブラックリッチの突撃店と噂に名高い『メタルバー デストロイ』より、店長のDr.ウェスト
『寿司 安藤』より、安藤親分…は本日急用との事で、若頭の安藤ジェイ氏
審査員長には『覇道財閥』の若き総帥、覇道瑠璃様
そして、今回の勝負の後見人として、『茶道甘史』ツェ・イーター氏
以上の素晴らしい審査員の公正な判断にて勝負を付けたいと思います!」
確かに、あらゆる意味で有名人が揃っていた。しかし、二人の料理人は審査員にさほど意に介せず、相手を見るのみ。
後見人を自称するツェ・イーターが解説を始める。
「……と、言う訳で、この勝負の勝者には多大な報酬と副賞が用意される。勝負方法はラーメンならば種類は問わない。最高の一杯を作り上げて欲しい。 ホージュン君の得意とする冷麺では無いがそれで良いかな?」
「かまわんよ、むしろ相手の得意料理で潰してこそ意味が有る。死ぬ気で係って来いタオロー!」
余裕を見せるホージュン。
「ちぃ…、内家の技を捨てた貴様になど負けはせん!」
タオローはまさに怒り心頭であった。その様子を見ていたナハツェーラーは試合開始の合図をする。
「アレ・キュイジーヌ!」
双方、調理を開始する。
ついに、決戦の火蓋は切って落とされたのである。 (第七話後編へ続く。)
覇道財閥が技術の粋を集めて建造した料理人達の殿堂、その名も『キッチンスタジアム』。外見は屋根のある古代ローマのコロシアムに似て、内部は左右対称に高級レストランにも負けない最新の厨房機器が並び、和洋中あらゆる調理がおこなえる様に設えてある。
そして、中央のキッチンをぐるりと囲むように客席が配置、更にはTV、ネット等の中継設備も整っている。
既に客席は満席。会場内は熱気に包まれていた。
「皆さん!『キッチンスタジアム』へようこそ!私がこのキッチンスタジアムの主宰、『ナハツェーラー』と申します!」
古風で豪奢な衣装を着たナハツェーラーと名乗る老齢の男が、会場の中央でマイク片手に大仰な手振りで朗々と喋っている。
「さあ!今宵、キッチンスタジアムにて、初めて執り行われる対戦は…皆様も一度はお聞きになられたであろう!中華料理の名店『青雲飯店』を相手に屋台一つで立ち向かう男の噂を!今宵はその全てに決着を付ける為に二人の料理人を召喚した!」
「先ずは、『青雲飯店アーカム一号店』店長にして中華料理会にその人ありと言われた、若き鬼才!『鬼眼冷麺』リュウ・ホージュン!」
ナハツェーラーが会場東側の扉を指すと盛大なスモークと共に扉が開き、ホージュンが登場する。
「では、続いて!屋台一つで青雲飯店に挑む男!その正体は、一度は死亡したと噂された元青雲飯店の料理人!中華料理の中でも神秘の『内家』の技を揮う男!『紫電麺』コン・タオロー!」
同じように、西側の扉からはタオローが登場する。
「そして、今宵の審査員もアーカムで名を轟かす者達ばかり、御紹介しよう!
『ファントムバーガー』より、店長のサイス・マスター氏
『燦月食品』より、開発部長の諸井女史
我らが『美食クラブ イノヴェルチ』より、麗しの姫君『美食の女王』リァノーン様
『皇路料理専門学園』より、講師にして調味料の権威、Dr.都
『ブラックリッチ』グループの全てを支配する男、マスターテリオン氏と『料理指南(レシピ)書』の精霊にして秘書のエセルドレーダ
ブラックリッチの中でも選りすぐりの七店『アンナクロース』より、金箔料理のアウグストゥス氏
同じくブラックリッチの突撃店と噂に名高い『メタルバー デストロイ』より、店長のDr.ウェスト
『寿司 安藤』より、安藤親分…は本日急用との事で、若頭の安藤ジェイ氏
審査員長には『覇道財閥』の若き総帥、覇道瑠璃様
そして、今回の勝負の後見人として、『茶道甘史』ツェ・イーター氏
以上の素晴らしい審査員の公正な判断にて勝負を付けたいと思います!」
確かに、あらゆる意味で有名人が揃っていた。しかし、二人の料理人は審査員にさほど意に介せず、相手を見るのみ。
後見人を自称するツェ・イーターが解説を始める。
「……と、言う訳で、この勝負の勝者には多大な報酬と副賞が用意される。勝負方法はラーメンならば種類は問わない。最高の一杯を作り上げて欲しい。 ホージュン君の得意とする冷麺では無いがそれで良いかな?」
「かまわんよ、むしろ相手の得意料理で潰してこそ意味が有る。死ぬ気で係って来いタオロー!」
余裕を見せるホージュン。
「ちぃ…、内家の技を捨てた貴様になど負けはせん!」
タオローはまさに怒り心頭であった。その様子を見ていたナハツェーラーは試合開始の合図をする。
「アレ・キュイジーヌ!」
双方、調理を開始する。
ついに、決戦の火蓋は切って落とされたのである。 (第七話後編へ続く。)