SS 『鬼哭麺』第六話 「百麺手」後編
御名神亭の業務日誌
「やぁ、いらっしゃい。こんな時間に何の用だ?」
アーカムシティーの高級住宅街の一画に『鬼眼冷麺』リュウ・ホージュンの私邸がある。
深夜の来客、それは『百麺手』ビン・ワイソンであった。
ホージュンは茹で上がった麺にスープのみを張ったドンブリを傍らのガイノイドに持たせたままビン・ワイソンを邸内に招き入れる。
「すまない。今、新しいスープの試作中でな。ルイリー、ここは良い。下がっていてくれ。」
主人の命に素直に従い、ドンブリをホージュンに渡し隣室へ異動するルイリーと呼ばれるガイノイド。
「…それは邪魔をしたな。」
「それは良いが…お前が人形を連れ歩くとは珍しい。何事だ?」
「うむ…、実はな、うちの店で半額フェアをやろうと思うのだが…知っての通り元兄弟が店を辞めてしまって人手が足らん。」
「その事は聞いている…それで?」
「俺とお前のガイノイドをン・ウィンシンのデーターにあったロボコックに改造し、足りない人手を補いたい。」
の言葉を聞いていたホージュンだが
「断る。」
答えは即答だった。
「なに!?何故だ!」
「…確かに、我等が『青雲飯店』は“基本メニュー”と“季節のフェア”以外は、店長の裁量でオリジナルメニューや価格等を独自に設定が出来る。…だが、いくら何でも屋台一つ如きで客足の遠退いた店で半額フェアとは…しかもロボコックだと?やはりお前に預けた人形も返して貰わねばな…。」
「貴様…今は店の為に人形などに構っている場合では無いだろう!第一、貴様のガイノイドは店での給仕にも使って無いでは無いか!」
「それがどうした?貴様の無能を補う為に人形はあるのではない。」
「…き、貴様ぁ…黙って聞いていれば…無能かどうか貴様自身で試してみろ!」
怒りの表情もあらわに、ビン・ワイソンは怒声を放つと同時に腕を展開。必殺の緊縛麺でホージュンを捕らえにかかる。
勝算はあった、何故なら以前にホージュンのサイバネボディの仕様書を見たことがある。其処には軍用パーツ等では無く、生身の臓器より少々強化されている程度のパーツばかり。
自分の音速を超える攻撃をかわせる道理は無い! …が、しかし、僅かに揺らいだだけで全ての麺糸をかわしていた。
「な!…」
「ふっ、これだから外家の料理人はくだらぬ。力がどうの、早さがどうのとばかり。それでは、レシピさえあれば人形でも作れるぞ。」
「く、くうっ…!ならばこれならどうだ!!」
ビン・ワイソンは今度こそ殺す気で、鉄串、包丁等を死角の無いぐらいに四方八方に投げる。
「まだ分からないのか?」
あり得ない動きで全てを避けきって、懐に入るホージュン。手にはドンブリ…一瞬のうちに麺を口に捻りこむ。
バチィッッ!!
「こ、これは、紫デn…。」
そのまま、倒れ動かなくなるビン・ワイソン。ホージュンは冷淡に、
「最後の晩餐は満足してくれたかな?」
と、つぶやくと、隣室の“人物”に声をかける
「さて、こちらも準備は整った。早速、初めて貰おうかツェ殿。」
翌日の夜、『青雲飯店アーカム二号店』の前に屋台を引いてきたタオローは躊躇する。何故なら店の入り口に一枚の張り紙。そこには
『誠に勝手ながら、当店は閉店致します。店主』
と。
「何もせずに閉店だと?馬鹿な!」
確かに今まででも、最終的には力に訴えてきた連中がこのようにアッサリ手を引くとは考えられない。どうしたものかと逡巡するタオローに近づいてくる人物。
「誰だ!」
「おいおい、脅かさんでくれたまえ。私はただのメッセンジャーだよ。リュウ・ホージュンからのな。」
「なっ!…貴様、何故…。」
「まぁ、ともかく、『決着が付けたくば二日後にこの地図の場所に来い』とな。」
「…良いだろう、奴にはルイリーの味わった苦痛をキッチリ返す。と伝えろ。」
「分かった。では、二日後に『キッチンスタジアム』で会おう。」
そのまま街の雑踏に消えていくツェ・イーター。タオローは複雑な思いのままそれを見送っていた。
今、『食の大黄金時代にして、大暗黒時代にして、大混乱時代』のアーカムシティーに嵐が巻き起こる!勝利の一杯はどちらに傾くのであろうか! (第六話 了。)
何とか、ここまで来ました。残すは最終話のみ…のはずですが…(汗
ともかく、今しばらくお付き合い下さいマセm(_ _)m
アーカムシティーの高級住宅街の一画に『鬼眼冷麺』リュウ・ホージュンの私邸がある。
深夜の来客、それは『百麺手』ビン・ワイソンであった。
ホージュンは茹で上がった麺にスープのみを張ったドンブリを傍らのガイノイドに持たせたままビン・ワイソンを邸内に招き入れる。
「すまない。今、新しいスープの試作中でな。ルイリー、ここは良い。下がっていてくれ。」
主人の命に素直に従い、ドンブリをホージュンに渡し隣室へ異動するルイリーと呼ばれるガイノイド。
「…それは邪魔をしたな。」
「それは良いが…お前が人形を連れ歩くとは珍しい。何事だ?」
「うむ…、実はな、うちの店で半額フェアをやろうと思うのだが…知っての通り元兄弟が店を辞めてしまって人手が足らん。」
「その事は聞いている…それで?」
「俺とお前のガイノイドをン・ウィンシンのデーターにあったロボコックに改造し、足りない人手を補いたい。」
の言葉を聞いていたホージュンだが
「断る。」
答えは即答だった。
「なに!?何故だ!」
「…確かに、我等が『青雲飯店』は“基本メニュー”と“季節のフェア”以外は、店長の裁量でオリジナルメニューや価格等を独自に設定が出来る。…だが、いくら何でも屋台一つ如きで客足の遠退いた店で半額フェアとは…しかもロボコックだと?やはりお前に預けた人形も返して貰わねばな…。」
「貴様…今は店の為に人形などに構っている場合では無いだろう!第一、貴様のガイノイドは店での給仕にも使って無いでは無いか!」
「それがどうした?貴様の無能を補う為に人形はあるのではない。」
「…き、貴様ぁ…黙って聞いていれば…無能かどうか貴様自身で試してみろ!」
怒りの表情もあらわに、ビン・ワイソンは怒声を放つと同時に腕を展開。必殺の緊縛麺でホージュンを捕らえにかかる。
勝算はあった、何故なら以前にホージュンのサイバネボディの仕様書を見たことがある。其処には軍用パーツ等では無く、生身の臓器より少々強化されている程度のパーツばかり。
自分の音速を超える攻撃をかわせる道理は無い! …が、しかし、僅かに揺らいだだけで全ての麺糸をかわしていた。
「な!…」
「ふっ、これだから外家の料理人はくだらぬ。力がどうの、早さがどうのとばかり。それでは、レシピさえあれば人形でも作れるぞ。」
「く、くうっ…!ならばこれならどうだ!!」
ビン・ワイソンは今度こそ殺す気で、鉄串、包丁等を死角の無いぐらいに四方八方に投げる。
「まだ分からないのか?」
あり得ない動きで全てを避けきって、懐に入るホージュン。手にはドンブリ…一瞬のうちに麺を口に捻りこむ。
バチィッッ!!
「こ、これは、紫デn…。」
そのまま、倒れ動かなくなるビン・ワイソン。ホージュンは冷淡に、
「最後の晩餐は満足してくれたかな?」
と、つぶやくと、隣室の“人物”に声をかける
「さて、こちらも準備は整った。早速、初めて貰おうかツェ殿。」
翌日の夜、『青雲飯店アーカム二号店』の前に屋台を引いてきたタオローは躊躇する。何故なら店の入り口に一枚の張り紙。そこには
『誠に勝手ながら、当店は閉店致します。店主』
と。
「何もせずに閉店だと?馬鹿な!」
確かに今まででも、最終的には力に訴えてきた連中がこのようにアッサリ手を引くとは考えられない。どうしたものかと逡巡するタオローに近づいてくる人物。
「誰だ!」
「おいおい、脅かさんでくれたまえ。私はただのメッセンジャーだよ。リュウ・ホージュンからのな。」
「なっ!…貴様、何故…。」
「まぁ、ともかく、『決着が付けたくば二日後にこの地図の場所に来い』とな。」
「…良いだろう、奴にはルイリーの味わった苦痛をキッチリ返す。と伝えろ。」
「分かった。では、二日後に『キッチンスタジアム』で会おう。」
そのまま街の雑踏に消えていくツェ・イーター。タオローは複雑な思いのままそれを見送っていた。
今、『食の大黄金時代にして、大暗黒時代にして、大混乱時代』のアーカムシティーに嵐が巻き起こる!勝利の一杯はどちらに傾くのであろうか! (第六話 了。)
何とか、ここまで来ました。残すは最終話のみ…のはずですが…(汗
ともかく、今しばらくお付き合い下さいマセm(_ _)m