SS 『鬼哭麺』第五話 「元氏双包丁」前編
御名神亭の業務日誌
「いらっしゃい。ハイ、ラーメン1、チャーシュー2、お待ち。」
「ラーメン大盛り2、ニンニク1、ネギ1はいりま~す。」
「はいよ!ルイリー、次ラーメン3出るぞ。」
アーカムシティーの一画、夜は屋台街になる場所で、タオローの『紫電ラーメン』の屋台は盛況だった。何故ならここ数日、名うての屋台が挙ってタオローに挑戦してくるからだ。
その光景を遠目で車中から覗く冷ややかな目をした男の名はビン・ワイソン。『青雲飯店アーカム二号店』の店長にして、今回の騒ぎの張本人。彼はこう宣言したのである。
『腕に覚えのある料理人に告ぐ。コン・タオローの屋台を倒した者には賞金と我が店の料理長の役職を与える』
…と。
結果、屋台街は挑戦者と、その勝負につられた客でごった返していた。
「…ふふっ、如何に常人離れした奴とて、多数のサイバネ料理人の挑戦と客の前に生身の身体では疲れは必至。そのうち味にも落ちよう。…それに、此方には“切り札”もあるしな…。」
不敵な笑みで車を出すよう指示するビン・ワイソン。彼の店もこれから忙しくなるのだ。」
「にいさま、次入るよ~。チャーシュー1大盛り1。」
「はいよ!次、お待ち。」
「は~い!お会計ですね~。」
タオローは驚異的な速度でラーメンを出し、更にルイリーが手伝っている今でも客が途絶える事は無い。だが、周りのサイバネ料理人どもも疲れ知らずのように料理を作り続けている。勝敗そのものは覇道の食品警察が出てきて仕切っているので問題は無いが、自身の疲労は半端な物では無い。徐々に削られる集中力と食材。売り切れはもうすぐだった…。
「さて…ストーン君、結果はどんな状態だい?」
「は!現在、コン・タオローの紫電ラーメンが一歩リードでありますが、売り切れが近く…あの…、ネス警部、何故に我々はこの様な事をしているのでありましょうか?」
「しょうがないじゃないか、屋台街に人が溢れこのままじゃあ大事故が起こりかねんし、この前の『上海食品公司』の事もある。不正を取り締まるのは立派な仕事だよ?」
「それはそうでありますが…しかし…。」
「しかしもカカシも無いよ。んじゃぁココはよろしく。俺は食べ…いやいや、見回りに行って来る。」
「逃げないで下さい、ネス警部~。」
悲壮な声を出すストーンを尻目にネスは人ごみに消えていく。その時、また一台の屋台が進入してくる。
「あー、そこの屋台。待ちなさい。登録は此方で受け付ける。」
ストーンが止めようとすると…。
「邪魔だな…兄者どうする?」
「知れた事だ尚英…『元氏双包丁』の名において…押して参る。ゆくぞ!」
「!」
二人が同時に動き、神速で一杯のラーメンがストーンに差し出され、一口。
「う、美味い!!と、登録許可ー!」
一言叫んでひっくり返るストーンに既に目をくれることなく、二人は奥へと進んで行く。
「さて…最後の一杯になるか…。」
タオローが少なくなったスープを見ながらつぶやくと、突然声がかかる。
「「その一杯、我等兄弟が試そう!正々堂々と『喰わせもん』で勝負だ!コン・タオロー!!」」
「何!?お前達は青雲飯店の『元氏双包丁』!」
「久しいな『紫電麺』…いや、今は仁義を忘れ、青雲飯店に楯突く麺鬼よ!」
「我等兄弟が貴様に引導を渡してやろう!」
「…今更言い逃れはせん…良かろう、我が麺をとくと味わえっ!」
「良い度胸だ、行くぞ兄者!」
「何時でも良いぞ尚英!」
今、アーカムシティーに一杯に賭ける料理人の熱き鼓動が響き渡る。 (第五話後編に続く。)
「ラーメン大盛り2、ニンニク1、ネギ1はいりま~す。」
「はいよ!ルイリー、次ラーメン3出るぞ。」
アーカムシティーの一画、夜は屋台街になる場所で、タオローの『紫電ラーメン』の屋台は盛況だった。何故ならここ数日、名うての屋台が挙ってタオローに挑戦してくるからだ。
その光景を遠目で車中から覗く冷ややかな目をした男の名はビン・ワイソン。『青雲飯店アーカム二号店』の店長にして、今回の騒ぎの張本人。彼はこう宣言したのである。
『腕に覚えのある料理人に告ぐ。コン・タオローの屋台を倒した者には賞金と我が店の料理長の役職を与える』
…と。
結果、屋台街は挑戦者と、その勝負につられた客でごった返していた。
「…ふふっ、如何に常人離れした奴とて、多数のサイバネ料理人の挑戦と客の前に生身の身体では疲れは必至。そのうち味にも落ちよう。…それに、此方には“切り札”もあるしな…。」
不敵な笑みで車を出すよう指示するビン・ワイソン。彼の店もこれから忙しくなるのだ。」
「にいさま、次入るよ~。チャーシュー1大盛り1。」
「はいよ!次、お待ち。」
「は~い!お会計ですね~。」
タオローは驚異的な速度でラーメンを出し、更にルイリーが手伝っている今でも客が途絶える事は無い。だが、周りのサイバネ料理人どもも疲れ知らずのように料理を作り続けている。勝敗そのものは覇道の食品警察が出てきて仕切っているので問題は無いが、自身の疲労は半端な物では無い。徐々に削られる集中力と食材。売り切れはもうすぐだった…。
「さて…ストーン君、結果はどんな状態だい?」
「は!現在、コン・タオローの紫電ラーメンが一歩リードでありますが、売り切れが近く…あの…、ネス警部、何故に我々はこの様な事をしているのでありましょうか?」
「しょうがないじゃないか、屋台街に人が溢れこのままじゃあ大事故が起こりかねんし、この前の『上海食品公司』の事もある。不正を取り締まるのは立派な仕事だよ?」
「それはそうでありますが…しかし…。」
「しかしもカカシも無いよ。んじゃぁココはよろしく。俺は食べ…いやいや、見回りに行って来る。」
「逃げないで下さい、ネス警部~。」
悲壮な声を出すストーンを尻目にネスは人ごみに消えていく。その時、また一台の屋台が進入してくる。
「あー、そこの屋台。待ちなさい。登録は此方で受け付ける。」
ストーンが止めようとすると…。
「邪魔だな…兄者どうする?」
「知れた事だ尚英…『元氏双包丁』の名において…押して参る。ゆくぞ!」
「!」
二人が同時に動き、神速で一杯のラーメンがストーンに差し出され、一口。
「う、美味い!!と、登録許可ー!」
一言叫んでひっくり返るストーンに既に目をくれることなく、二人は奥へと進んで行く。
「さて…最後の一杯になるか…。」
タオローが少なくなったスープを見ながらつぶやくと、突然声がかかる。
「「その一杯、我等兄弟が試そう!正々堂々と『喰わせもん』で勝負だ!コン・タオロー!!」」
「何!?お前達は青雲飯店の『元氏双包丁』!」
「久しいな『紫電麺』…いや、今は仁義を忘れ、青雲飯店に楯突く麺鬼よ!」
「我等兄弟が貴様に引導を渡してやろう!」
「…今更言い逃れはせん…良かろう、我が麺をとくと味わえっ!」
「良い度胸だ、行くぞ兄者!」
「何時でも良いぞ尚英!」
今、アーカムシティーに一杯に賭ける料理人の熱き鼓動が響き渡る。 (第五話後編に続く。)