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御名神亭の業務日誌

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SS 『鬼哭麺』第三話 「老麺太后」後編

御名神亭の業務日誌

 アーカムシティーの一画、『青雲飯店 アーカム四号店』の前は異様な興奮に包まれていた。
 『老麺太后』チュウ・シャオヤン『紫電麺』コン・タオローが直接、味勝負をしているのだ。しかも、双方妨害ありのまさにデスマッチである。

 「…五手までは待ってやる。来るがいい…。」
 「舐めるなぁー!」

 早速、チュウの手から弾丸のような速度で菜箸が飛ぶ。
 が、しかし、タオローは苦も無くこちらも菜箸で摘み取る。

 「ふん、遅いな。」
 「くぅぅっ!」

 歯軋りするチュウは、今打っていた麺に凝固剤を混入して、引き伸ばし…伸ばした麺を捩ると、まるで鞭のように振り回し、タオローに襲いかかる。
 タオローは上体だけでかわすが、その先の湯のたっぷり入った寸胴鍋を吹っ飛ばした。

 「あぶねぇ!」

 あわや周囲の観客に熱湯が浴びせかけられる寸前、飛び出したフリッツががっちりキャッチ。しっかり手には鍋つかみをはめて。

 「ふぅ、あぶねぇなぁ、まったく青雲飯店ってのは物騒だねぇ。おい!観客はこっちでキッチリ守ってやるから調理に専念していいぜ。」

 やっている事とはうらはらにフリッツは軽い口調で言う。

 「それは、ありがたい。」

 タオローは続けざまに来る三、四撃目をかわしながら口元を緩める。

 「チッ、余計な真似を…まぁいいさ、これでどうだ!!」

 チュウの麺鞭に先ほどの攻撃で包丁、鉄串などが纏わり付いている、そしてついに鞭の先端が音速を超えた。

 「死ねぇ!!」
 「ふん!これで五手!今度はこちらから行くぞ!」

 タオローに向かって飛んでくる鞭を地面を蹴ってよけると手にした包丁で麺鞭を切断、切った先をそのまま掴むとチュウに向け投げ返す。チュウは手元に残った麺鞭で飛んできた先の部分を受け止めるとそのままゴミ箱に捨て、今度こそ普通に麺を打つ。

 「ちい、小癪な!なら、直接殺してやるよ!」

 チュウは麺をゆで始め、その空いた僅かな時間にタオローに迫る。手に調理器具や包丁が展開したままで。
 しかし、タオローも菜箸、包丁で受け止め、反撃で浅い傷をつけながら、調理は進む。

 「ならこれで、貴様を刀削麺にしてやる!」

 チュウのふくらはぎから中華包丁が展開し、タオローに迫る。チュウ必殺の刀削脚である。これで、刀削麺は勿論、邪魔をする幾多の料理人を血の海に沈めてきたのだ。
 だが、タオローは目を見開くと、

 「料理人が足を使うとは何事だぁーーーー!!」
 「ぐはぁっ!」

 タオローが裂帛の気合と共に繰り出した拳がチュウの鳩尾にめり込み、そのまま自分の調理スペースまで吹っ飛ぶ。

 「ぐううぅぅ…。」

 よろめきながら立ち上がり反撃を考えるも、麺上げの時間でもあるのでそのまま調理を再開する。

 「…時間よ、できた方から提出しなさい。」

 先に出したのはコン・タオロー。三人は一言も喋らずに熱いうちに平らげる。

 「見事な麺だ。風味、喉越し申し分無い。」
 「スープも、コクがありながらすっきりしているわね。」
 「うん、チャーシューもとろけるようで、メンマはシャキシャキと心地いい。」
 「「ごちそうさまでした!」」
 「…まいど。」

 高評価に面白くないチュウ・シャオヤンがドン!とドンブリを出す。

 「さあ、食って見やがれ、この『老麺太后』と呼ばれたアタシのラーメンを!」

 白湯仕立てのスープにチャーシュー、メンマ、煮玉子、ネギ等を色鮮やかに乗せた一杯。…だが、二人は口を付けず、只一人、葱太のみが一気に食べる。

 「な!何故アタシのを食べない!?」
 「…あなたのラーメンは食べるに値しない。」
 「最初に俺は言ったよな?毒は無駄だと。ホレ、見るがいい。」

 指差す方向には葱太が…筋肉が盛り上がり、口は裂け牙が生えそろう。『ヘルゴニア』へ変身していた。

 「ば、馬鹿な!アタシは何も…。」
 「あなたの腕に滴る液体は何かしら?即効性のシビレ薬って所かしらね。」
 「そ、そんな!エマージェンシーは出ていな…はっ!お前か!

 驚きのチュウを涼しい顔で見ながらタオローは言う。

 「お前が仕掛けて来たときに、回路の幾つか…特にセキュリティー廻りは潰しておいた。その上で、常套手段のシビレ薬を少量ずつ液モレをおこすようにしておいたのさ。」
 「くそ!卑怯者が!」

 どっちが…と観客がツッコミを入れたくなるその時、獣の咆哮が轟いた。

 「グウウ…餓ァァァァ!!」
 「や、止めろ、ギャアァァァァ!

 チュウに飛び掛るヘルゴニアはサイバーアームすらものともせず引き千切り、噛み付き、砕く。

 「あ~あ、だから言ったのによ。この公衆の面前だ、あいつの料理人生命は終わったな。…さて、どうするモーラ?」
 「どうすると言ったって、ああなったら、とにかく腹一杯食べるか、満足できる料理を食べるしかないけど…。」
 「では、少々手荒にやってもいいか?」

 タオローが新たなドンブリを持って横に立っていた。

 「ああ、良いぜ。多少の事じゃ死にはしない。」
 「ちょっとフリッツ、葱太が聞いたら怒るわよ。でも、どうするの?」
 「こうする!」

 ヘルゴニアに向かってタオローが跳ぶ、スープを一滴もこぼさずに。

 「さぁ、少々きついが俺の『紫電麺』を喰らえ!」

 ヘルゴニアが振り向いた時、ドンブリは眼前にあり…そのまま顔を突っ込んだ。
 そして、電撃を喰らった様に一瞬、ビクッと痙攣するとそのまま倒れこむ。

 「手加減はしておいた。そのうちに気がつくだろう…。」

 そのままタオローは店に入り、一体のガイノイドの首を持って、裏口から闇夜の街に消えていった。

 「なんつーか、美味かったのか、単なる電撃かわからんな…。」
 「まぁ、被害が無くて良かったわ。さあフリッツ、葱太を運んで、撤収しましょう。」

 まばらになってゆく人ごみの中、ボロボロのチュウ・シャオヤンは忘れられたままだった…合掌。


 さて、一方、タオローは廃墟の中、ルイリーの魂魄を統合していた。やがてPDAが終了のダイアログを表示する。

 「…ルイリー…分かるか?俺だコン・タオローだ…。」

 タオローは祈るようにガイノイドの、ルイリーの顔を見る。やがてたどたどしく口を開き

 「あ…に…さ…ま?…あー、あにさまだぁ。」

 満面の笑顔を見せる。タオローは手に力が入り

 「痛いよ、あにさま。あー、あにさまへんなお顔してるー。」

 ルイリーがまた笑う。タオローは思った

 (か、かわええ…。やっぱりルイリーはこのぐらいがいいなぁ…)

 普段のタオローがけして見せないぐらい惚けて鼻の下が伸びていた…真性の『シスコン』で『ロリコン』であった。

 ここはアーカムシティー、『食の大黄金時代にして、大暗黒時代にして、大混乱時代。』どんな性癖の料理人であろうとも受け入れる街…。   (第三話 了)

 なんとか、第三話終了です…やっぱり長くなったなぁ…バトルシーンって難しいですよ(汗
…いや、その前に何故か(?)タオローが壊れましたが…(滝汗  …まぁ、いいか(いいのか?
 では、皆様の感想お待ちしてますm(_ _)m

Comment

[28] こ、壊れた(ToT)
そうかー、タオローはシスコンの
ロリコンか~。って、ここで目的
果たしてるじゃないですか!
折角のバトルシーンも全部、最後の
台詞に飲まれてしまってるような・・・
ま、続き楽しみにしてますよ~
[29] ロリコンの何が悪いか?
『ヘルゴニア』の文字列だけで笑えますって、コレ。
鬼哭街を脳内で平行起動してると最高に笑えます。
どんぶりに顔を突っこんでどうやって平らげたのか不思議ですが。
どんな性癖の料理人でも……ならば人外ロリにおもらしさせるような九郎でも受け入れられますね。
やっぱおもらしの場所は料理人の舞台たる…?
[30] あえて、突っこむなら
>「料理人が足を使うとは何事だぁー-ー!!」
その前に、
「料理人が包丁を凶器に使うとは何事だぁーーー!!」
言わずにおれなんだ。ごめん。
[31] もう一つ突っ込むと
足コネうどんってあるよね☆

こういうのを無粋と言います。解かってますとも。
[32] ツッコミかもーん!
 いや~、自分でもツッコミどころ満載と思ったからなぁ~(^^;

 ちなみに、ヘルゴニアのタイトル(?)は『給食懺鬼 ヘルゴニア』…頭悪いなぁ…。

 まぁ、ちゃんと物語は続きますのでこれからもお楽しみ下さい(^^;;

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水上雷太

Author:水上雷太
『水上雷太』
 「全スポ会会長」
 「御名神亭やとわれ店長」
 「サイト管理人」
 様々な“自称”を使い分ける男。ぶっちゃけ三十路ヲタ(ぷ

 ブログ開設4年目に突入し、何を血迷ったかサイトまで開設する。 どこまで突き進む気だ?

『御剣みこと&ほむら』
 御名神亭の店員。双子の姉妹。
 一見中○生並のコンパクトボディだが18才以上(笑
 一人称が「ボク」と「オレ」だが女の子。
 ほむらはふた○りだが女の子!

『Dr.ノーザンウェスト』
 御名神亭に住み着く、謎の「萌え学」講師。
 某キ○○イ博士に似ているのはただの噂(笑
『ワイルド=エルザ』
 通称「ワルザ」Dr.が某所から設計図を入手して作り上げたモエロイド。
 語尾はお約束の「ロボ。」(笑

 ここは、上記メンバーでお送りするエンターテイメントサイトである。

 リンク&アンリンクはフリーです。ご一報頂けると、リンクを貼り返します(笑





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