『灰藤玄太郎の事件簿』 4
御名神亭の業務日誌
ガガガガガガッ!
キンッ!ザシュッ!
研究所内の中に突入した俺と鋼刃は、雨月の私設軍を蹴散らしながら進んでいた。
キンッ!ザシュッ!
研究所内の中に突入した俺と鋼刃は、雨月の私設軍を蹴散らしながら進んでいた。
蹴散らす…まさにその形容詞どおりだ。
ただし俺『灰藤玄太郎(はいどう げんたろう)』では無く、隣に居る、袴姿に重装備の大男『御剣鋼刃(みつるぎ こうじん)』の方だがな…。
しっかし、この男どんな体力してるんだか…。
さっきから軽装備の俺より全身重火器の鋼刃の方が早く駆け抜けている。
挙句、両手にアサルトライフルを持ったまま、敵陣のど真ん中に飛び込んでは謎の体術を駆使し粉砕していく。
俺は、完全にバックアップに回っていれば良く…未だスコーピオンのマガジンを一本しか使っていなかった…。
「ったく、俺が居る必要ねぇな…。」
「いやいや、確実なバックアップあってこそ、わしの『御剣流戦闘術』が一つ『銃の型』は生きるというもの。」
「『銃の型』?」
「うむ、分かりやすく言えば、一対多の戦闘に向いた銃撃と格闘技をミックスした体術でな、上手く使えば、遠近両方の距離に対応出来る。」
「…マジかよ…つーか、まさか時々、空で撃ってたのは…。」
「ほう、察しが良いな。
そのとおり、銃の反動も利用するのが胆だ。
何なら玄太郎殿にも教えようか?」
「…ここから生きて戻ったらな…。
つーか、秘伝の技じゃねぇのかよ。」
「何、先程から玄太郎殿の体捌きを見て習得は可能と見ておるし、何よりわしがお主を気に入ったという事じゃよ。」
「…そりゃ光栄だ…。」
何を基準に見ていたのか知らないが、随分気に入られたもんだ…ま、悪い気はしねぇがな…。
ともかく、何事も無く(?)地下フロアまで来たのだが…そこで待っていたのは…。
「!?
…あ、あの男は…!」
長身痩躯の日本刀を持った男…御木の隠れ里で楓を連れ去った男だ!
俺は全身の血が上るが…隣に居る男の怒気に正気に戻らざるえなかった。
「…すまんが玄太郎殿…先に行ってくれぬか。この男はわしが引き止めておく…。」
その形相はまさに鬼が如し。
おそらく鋼刃が言っていた御神の面汚しとかいう男なんだろう。
しかも、あの男の殺気は俺のレベルを遥かに超えた力だという事は明白…。
詰まるところ、情けないが俺に出来る事は先を急ぎ、一刻も早く楓を救出する事なんだろう。
「O~K~。
そんじゃま、俺は先を急がせて貰うぜ。
…必ず生きて戻れよ…。」
そう言うと、俺は長身痩躯の男の横を通り抜け先を急ぐ。男は追ってこなかった。
「かたじけない、玄太郎殿…。」
「随分な余裕だな鋼刃!
貴様の愛刀『鋼虎』はここだぞ。」
厭らしい笑みで男は刀を抜く。
「ふん…、御神の…、いや、御剣家の恥は御剣家が家長たる御剣鋼刃が削ぐ!
…たとえそれが実の弟でもな…『針陽(しんよう)』!」
「…貴様…まだ俺を弟だと?くくくっ…甘いなぁ…。
そんな貴様に反吐が出るわ!」
叫ぶと同時に、針陽は鋼刃に斬りかかる。
鋼刃は今まで持っていたアサルトライフルを投げ捨て、腰の日本刀を抜刀、針葉の刀を自分の刀で反らしそのまま針陽に斬りかかる。
刹那の後、双方皮一枚を切るに留まっていた。
「くっくっくっ…『鋼虎』を上手く反らしたとはいえ、刃こぼれ一つしないか…流石に硬化を使ったか。
「…『鋼虎』はわが愛刀…業物とはいえ、折られる危険はあったからな…。
ついでに言っておくが、鋭角化も使っておる。」
「やれやれ、本気で結構な事だ。」
何処かまだ余裕のある厭らしい笑みで針陽が言う。
鋼刃は苦渋の表情であった。
「…だが何故だ?何故貴様は鋼虎を奪い、家を出た後、行方をくらませ数年。
それが、雨月に組みして…、御木を襲う必要がどこにあるのだ!」
「…必要?
ああ、必要だ!これは御神のすべてを抹殺するほんの一歩…。
そのために雨月を利用しただけの事!」
言いつつ、再び斬りかかる。
受ける鋼刃だが、直後、針陽は左手で腰からコルトガバメントを抜き発砲。
銃弾は鋼刃が身に着けたライフルに当たる…いや、当てさせられたのだ。
「針陽!わしら御剣流を極めた者同士では拳銃程度で傷つけられる事は無いぞ!」
「そうだ…な!」
再び発砲、再度身に着けた銃器で受けるが…。
「ぐわっ!」
ライフルはおろか、鋼刃の体を貫いていた…。
「くっくっくっ!いくら身体自体を硬化していようが、俺の能力『貫通』は物理防御を無視出来る上、貴様のように身体に触れていなければ発動しない欠陥能力でもない。
ご覧のとおり、発射後の銃弾にも付加出来るんだよ!
…まぁ、銃弾だと貫通しちまうのが難点だがな。」
まさに愉快の極みという様に饒舌になる針陽。
銃弾は貫通していたが、苦悶の表情の鋼刃はそれでも針陽に問う。
「ぐうぅぅ…。
先程の…御神の抹殺とは聞き捨てならん…一体何の恨みがある!」
「恨み?
…貴様には分かるまい…『マナ』に会っていない者の苦しみを!」
「お主…『愛(まな)様』に会う会わないは役目の違いであろう!」
「貴様が言うな!
役目だ使命だと…世界の歪みを正すと言うが…今の人間達を守る価値なぞあるものか!
そんな物に縛られる一族など下らん!俺が全てを破壊してやる!」
針陽は積年の恨みを吐き出すように怒声を放つ。
「マナとて、御神の頭首と伝えられるが本当に“世界に溶けた”とは怪しいではないか!
その力ゆえ追い出されたとは考えられんか?
そうして、実権を握った御名神の方が怪しいとは思わぬのか!」
「貴様!物事には言って良い事と悪い事が有るのだぞ!
御名神家の先代や光輝殿がいかに御神の一族全体を思って采配を取っているのが分からんのか!」
「ふん!これ以上の問答は無用!
貴様も全力で来い!」
そう言い捨てると、針陽は『鋼虎』を突きの型に構える。
「……致し方無い…。」
ぼそりと一言呟いて、覚悟を決めた鋼刃も正眼の構えを取る。
そのまま睨み合う二人だったが、その静寂を破ったのは遠くから聞こえる爆発音だった。
「チェイアーー!!」
「でぇえーーいっ!」
先に動いたのは針陽、必殺の突きは鋼刃の心臓を真っ直ぐ狙う。
鋼刃は正眼から瞬時に、裏切り上げへ刀を返し突きを逸らす手。
裂帛の気合と共に双方間合いを詰め、刹那。
ギィンンッ!……。
(『灰藤玄太郎の事件簿』 4了。 5へ続く。)
Comment
[385] Re: 『灰藤玄太郎の事件簿』 4
すみません、またしても時間の都合で続きます。
つーか、今回、完全に鋼刃さんが主人公です。ええ、否定も何もあったもんじゃ無い。
話を見事に持っていってしまいましたよ、兄弟で…(汗
しかも、チャンバラ伝奇活劇化して…orz
さぁさぁ、次回どうなる?決着は?つーか、玄太郎の活躍はどっちだ!?(爆
補足・玄太郎さんのイメージは「レオン」とか「ソルティーレイ」とか「スナッチャー」あたりのロングコートのヒーローで宜しく(笑
つーか、今回、完全に鋼刃さんが主人公です。ええ、否定も何もあったもんじゃ無い。
話を見事に持っていってしまいましたよ、兄弟で…(汗
しかも、チャンバラ伝奇活劇化して…orz
さぁさぁ、次回どうなる?決着は?つーか、玄太郎の活躍はどっちだ!?(爆
補足・玄太郎さんのイメージは「レオン」とか「ソルティーレイ」とか「スナッチャー」あたりのロングコートのヒーローで宜しく(笑
[386] Re: 『灰藤玄太郎の事件簿』 4
>玄太郎さんのイメージは「レオン」とか「ソルティーレイ」とか「スナッチャー」
オーケーw
で、おっさんのビジュアルイメージは?(爆
つぇえぞ一人師団w
ついでにリンク報告をします。
長らく一方通行だったので相互という
何だか良い言葉と胡散臭い印象の出始めている
言葉を使うには今更遅いんですが……
ご、ご報告なわけです(ペコリ)
オーケーw
で、おっさんのビジュアルイメージは?(爆
つぇえぞ一人師団w
ついでにリンク報告をします。
長らく一方通行だったので相互という
何だか良い言葉と胡散臭い印象の出始めている
言葉を使うには今更遅いんですが……
ご、ご報告なわけです(ペコリ)