SS 『鬼哭麺 外伝』第二話 「漢の包丁」
御名神亭の業務日誌
俺の名は大十字九郎。アーカムシティーで何の因果かファミリーレストラン『レモンパイン』の店長をしている。そう、あの日、姫さんこと覇道瑠璃が現れ
「『料理指南(レシピ)書』を探して欲しいのです。それは、調理士探偵の貴方にしか出来ない事です。」
などと、言われてから。
まぁ、何とか俺は『料理指南(レシピ)書』の精霊『アル・味フ』を見つけ出し…たのは良いが、聞いて無いぞ、レシピ書がこんなのだったとは…。
「こら、九郎!今日は覇道の小娘に呼ばれておるのだろう。汝はこの最強のレシピ書、『ネクロノ味魂』のオリジナル『アル・味フ』のマスターぞ。シャッキとせい!」
「へいへい…、んじゃまぁ、行きますか。しかし、急な呼び出しだよなぁ…。昨日いきなり執事さんに『明日の大十字様の休日。我が覇道邸へお越し下さい。』だもんなぁ…俺、また何かやったか?」
「さあな、色々有り過ぎて検討もつかん。」
「…だよなぁ…、つって、行かないわけにもいかないし、しゃあねぇ腹括って行くぜ、アル。」
「うむ、ではまいろうか。」
そして、覇道邸で待っていたのは…鬼だった…。
「…と、言う訳で、大十字さんの料理の腕を鍛える為に、お呼びしたコン・タオローさんです。」
「…はい?なんでまた今更…。」
ギロッ!
「ふん、見れば、才能だけはあるようだが、基本がなって無いな…。誰かに師事した事は?」
「いや、無い…。(怖えぇ~。)」
「だろうな、よし、とりあえず基本を見る。キャベツの千切りからやって貰おう。」
「よし、アル。『魔調理士(コック)スタイル』だ!」
「応!」
「渇ッ!!」
いきなりの怒声に変身出来なかった。
「貴様の事は聞いている。これから俺の言うまで、魔調理士スタイルとか言うのは禁止だ。自分の実力も無いのに百年早い!」
「むう…誰かは知らぬが、迫力だけならマスターテリオン並みだのう…。」
「はい、アル・味フ様。彼は、以前、このアーカムシティーの中華料理で一番と謳われた、青雲飯店で一、二の実力の持ち主と言われておりましたから。」
「なるほどのう、では今回は我の出番はなさそうだな。九郎、しっかりやるが良い。我は上で茶でも飲んでおる。」
そう言うと、薄情にもアルの奴は地下の調理室を出て行きやがった。
「くうぅ…、やってやろうじゃないか!」
意気込んだものの…。
「なんだ!この不揃いな太さは!そんな物で客に出せるか!ええい!一度だけ手本を見せてやる!」
そう言ったコン・タオローの腕は凄まじかった。
「腕の動きが見えねぇ…。本当に生身なのか?」
「お前は考えてから動かすからブレる。意よりも早く包丁を動かせ!身体に覚えこませるんだ。『ブラックリッチ』とやらのオーナーシェフ、マスター照り温とやらを倒すのならば、これぐらいは生身でこなせ!」
「いや、照り温じゃねぇよ…。」
「口を動かす前に手を動かせ!」
「はい!」
「煮物の煮崩れを防ぐには、面取りをキッチリしろ!」
「はい!」
「肉を焼く時は、両面を強火で焼いてから、弱火でじっくり焼くんだ、レアなら…。」
「はい!師匠!」
「蒸し物は必ず湯が沸騰してから入れろ!手間を惜しんだ奴は客に逃げられるぞ!」
「はい!師匠!」
こうして、一週間の時間が過ぎ…
「よし、それでは、これで最後だ。魔調理士スタイルになってオペレーションを想定、バーグ定食3、ケチャップオムライス、ミックスサンド2。これをこなせ!最低でも20分以内だ!それを過ぎれば客が逃げるぞ!」
「よし、九郎!準備は出来ておる。変身じゃ。」
「応!」
…18分後
「オーダー出ます!…師匠…。」
「…ふむ、盛り付けも良し。時間も良し。…味は…うむ、合格だ。よくやったな九郎。」
「ははっ…。やったぜ、アル。」
「うむ、見事なオペレーションであったぞ九郎。これで『アンナクロース』の店長どもにも遅れはとるまい。」
「ふふっ、俺も久しぶりに清清しい気分だ。ならば、お前にこれをやろう。俺が師事した職人に…性格は少々問題はあるが、腕は一流の師匠でな『俺の国では、師匠から貰える包丁は卒業の証だ、半年だけだったが、お前さんにもこれをやろう』と和包丁を貰った。お前はファミレスの店長だからな、牛刀が良かろう。刀匠バルザイ氏の逸品だ、これからも精進しろよ。」
「師匠!ありがとうございます!」
俺は、コン師匠と固い握手を交わした。漢同士の絆だった。
俺は今日も、違法な出店をする『アンナクロース』の『デウスマキナ(機械仕掛けの移動式店舗)』に戦いを挑む。俺の相棒、『アル・味フ』と『レモンパイン』とそして…『バルザイの牛刀』を振るって…。
ここは、アーカムシティー、『食の大黄金時代にして、大暗黒時代にして、大混乱時代。』野望と希望を抱く料理人達の大舞台。 (鬼哭麺外伝 第三話了。)
「『料理指南(レシピ)書』を探して欲しいのです。それは、調理士探偵の貴方にしか出来ない事です。」
などと、言われてから。
まぁ、何とか俺は『料理指南(レシピ)書』の精霊『アル・味フ』を見つけ出し…たのは良いが、聞いて無いぞ、レシピ書がこんなのだったとは…。
「こら、九郎!今日は覇道の小娘に呼ばれておるのだろう。汝はこの最強のレシピ書、『ネクロノ味魂』のオリジナル『アル・味フ』のマスターぞ。シャッキとせい!」
「へいへい…、んじゃまぁ、行きますか。しかし、急な呼び出しだよなぁ…。昨日いきなり執事さんに『明日の大十字様の休日。我が覇道邸へお越し下さい。』だもんなぁ…俺、また何かやったか?」
「さあな、色々有り過ぎて検討もつかん。」
「…だよなぁ…、つって、行かないわけにもいかないし、しゃあねぇ腹括って行くぜ、アル。」
「うむ、ではまいろうか。」
そして、覇道邸で待っていたのは…鬼だった…。
「…と、言う訳で、大十字さんの料理の腕を鍛える為に、お呼びしたコン・タオローさんです。」
「…はい?なんでまた今更…。」
ギロッ!
「ふん、見れば、才能だけはあるようだが、基本がなって無いな…。誰かに師事した事は?」
「いや、無い…。(怖えぇ~。)」
「だろうな、よし、とりあえず基本を見る。キャベツの千切りからやって貰おう。」
「よし、アル。『魔調理士(コック)スタイル』だ!」
「応!」
「渇ッ!!」
いきなりの怒声に変身出来なかった。
「貴様の事は聞いている。これから俺の言うまで、魔調理士スタイルとか言うのは禁止だ。自分の実力も無いのに百年早い!」
「むう…誰かは知らぬが、迫力だけならマスターテリオン並みだのう…。」
「はい、アル・味フ様。彼は、以前、このアーカムシティーの中華料理で一番と謳われた、青雲飯店で一、二の実力の持ち主と言われておりましたから。」
「なるほどのう、では今回は我の出番はなさそうだな。九郎、しっかりやるが良い。我は上で茶でも飲んでおる。」
そう言うと、薄情にもアルの奴は地下の調理室を出て行きやがった。
「くうぅ…、やってやろうじゃないか!」
意気込んだものの…。
「なんだ!この不揃いな太さは!そんな物で客に出せるか!ええい!一度だけ手本を見せてやる!」
そう言ったコン・タオローの腕は凄まじかった。
「腕の動きが見えねぇ…。本当に生身なのか?」
「お前は考えてから動かすからブレる。意よりも早く包丁を動かせ!身体に覚えこませるんだ。『ブラックリッチ』とやらのオーナーシェフ、マスター照り温とやらを倒すのならば、これぐらいは生身でこなせ!」
「いや、照り温じゃねぇよ…。」
「口を動かす前に手を動かせ!」
「はい!」
「煮物の煮崩れを防ぐには、面取りをキッチリしろ!」
「はい!」
「肉を焼く時は、両面を強火で焼いてから、弱火でじっくり焼くんだ、レアなら…。」
「はい!師匠!」
「蒸し物は必ず湯が沸騰してから入れろ!手間を惜しんだ奴は客に逃げられるぞ!」
「はい!師匠!」
こうして、一週間の時間が過ぎ…
「よし、それでは、これで最後だ。魔調理士スタイルになってオペレーションを想定、バーグ定食3、ケチャップオムライス、ミックスサンド2。これをこなせ!最低でも20分以内だ!それを過ぎれば客が逃げるぞ!」
「よし、九郎!準備は出来ておる。変身じゃ。」
「応!」
…18分後
「オーダー出ます!…師匠…。」
「…ふむ、盛り付けも良し。時間も良し。…味は…うむ、合格だ。よくやったな九郎。」
「ははっ…。やったぜ、アル。」
「うむ、見事なオペレーションであったぞ九郎。これで『アンナクロース』の店長どもにも遅れはとるまい。」
「ふふっ、俺も久しぶりに清清しい気分だ。ならば、お前にこれをやろう。俺が師事した職人に…性格は少々問題はあるが、腕は一流の師匠でな『俺の国では、師匠から貰える包丁は卒業の証だ、半年だけだったが、お前さんにもこれをやろう』と和包丁を貰った。お前はファミレスの店長だからな、牛刀が良かろう。刀匠バルザイ氏の逸品だ、これからも精進しろよ。」
「師匠!ありがとうございます!」
俺は、コン師匠と固い握手を交わした。漢同士の絆だった。
俺は今日も、違法な出店をする『アンナクロース』の『デウスマキナ(機械仕掛けの移動式店舗)』に戦いを挑む。俺の相棒、『アル・味フ』と『レモンパイン』とそして…『バルザイの牛刀』を振るって…。
ここは、アーカムシティー、『食の大黄金時代にして、大暗黒時代にして、大混乱時代。』野望と希望を抱く料理人達の大舞台。 (鬼哭麺外伝 第三話了。)
Comment
[33] 大いなる強壮なヨグ=ソトースの御名ヴーアの無敵の印において…
ウルタールの賢者バルザイが……包丁を鍛っていたとは…。
ハテグ=クラの頂上で行われる「神の料理の宴」に近づきすぎたために命を落とした……のか?
いかがわしい製法とともに「霊力が失われるため、何人にもふれさせぬよう注意せねばならぬ」とネクロノ味魂にありますが。ともかくこれでレモンパインの胡散臭さ倍増!
アルのおもらしはまだー!?
ハテグ=クラの頂上で行われる「神の料理の宴」に近づきすぎたために命を落とした……のか?
いかがわしい製法とともに「霊力が失われるため、何人にもふれさせぬよう注意せねばならぬ」とネクロノ味魂にありますが。ともかくこれでレモンパインの胡散臭さ倍増!
アルのおもらしはまだー!?
[36] そっちですか!?
いや~、実は、あんまりクトゥール物読んでないんで…つか、矢野健太郎のラミアシリーズがメイン(汗
しかし…旧支配者や外なる神々の料理…気が狂いそうですな、食う度にSAN値チェックが要りそうだ(笑
それと…おもらしは…外伝がまたいりますがな…。
しかし…旧支配者や外なる神々の料理…気が狂いそうですな、食う度にSAN値チェックが要りそうだ(笑
それと…おもらしは…外伝がまたいりますがな…。