SS『鬼哭麺 外伝』第一話 「天使のパン屋」
御名神亭の業務日誌
「ありがとうございましたー。」
アーカムシティーに朝がくる。繁華街から少し離れた場所に立つ店、『エンジェル ブレッド』の扉が開き、焼きたてのパンの匂いと共に二人の女性客が出てくる。
「ねぇねぇ、小巻ちゃん、今の店員さんってば、面白かったよねぇ~。顔真っ赤にして『あ、あの、お客さん達かわいいから、サ、サービスして置きます』だってぇ~。」
「もう、風子ったら…、店員さん、新人さんっぽいし、からかったら駄目じゃない。」
「だぁって~、でもあれさ、小巻ちゃんに気があるのかもよ~にしし。」
ちょっといやらしい目つきで小巻を見ながら笑う風子をふわりとかわしながら
「馬鹿な事言ってないで、早く帰って朝ご飯にしましょ。」
「そう!それ、な~んで、あのクソ親父、『今日は飯が無いのか。なら仕方ないパンでも食うか。小巻、風子買って来い!』って、いつもなら『日本人の朝飯は米に決まっとる!』って、この街だから手に入るようなものの、何だろねあの態度。」
「まぁ、きょうはさっちゃん寝坊したみたいだし、きっと昨日のお客さんが帰るまで起きてて、片付けまでやってたからだろうけど…。」
「そういえば、なんか変わった人だったよねぇ、誰?」
「さぁ…、さっちゃんから聞いた話だと、昔、半年ぐらい父さんの下で修行をしに青雲飯店からきた…名前は…コン・タオローさんだったかな。」
「ってなんで、中華料理の人が寿司職人の所に修行にくるのよ?」
「出稽古ってやつじゃない?久しぶりに会ったらしくて父さん強引に家に連れて来たみたい。」
ふぅん、とあまり興味なさそうに聞きながら思い出したように
「で、さっちゃんは?」
「さぁ、…多分、クソ親父と“儀式中”…。」
小巻は憮然と言いながら顔が曇っていく。
“儀式”二人の父、渡部一斉が女の陰部に愛用の包丁の峯を擦り付ける一種のまじない。当然二人の娘にとって嫌悪の対象ではある。
「あのクソ親父はぁ!ったく、いくら腕が良いたって、なんであんなのおいとくかなぁ『寿司 安藤』は!オマケに、若頭のジェイはいけ好かないし、オカマの新沼やウドの大木のビック・サム、って絶対潰れてもおかしくないんだけどなぁ…。」
グウゥゥ…
力んだ風子のお腹が盛大に鳴り響く。
「ぷっ!くくく…、さぁ、ともかく、帰って、朝ご飯にしよう?」
「そうだね、私お腹ぺこぺこだよぉ。」
家路に急ぐ二人。そう、朝は必ずやってくるのだと信じて…。
さて、二人が出て行った『エンジェル ブレッド』でも一騒動起きていた。
「ちょっとヴィム!さっきの接客はなによ!ちょっとかわいいからって鼻の下伸ばしてみっともない!」
怒るアンリに、何故怒っているかわからない。と、いった感じでヴィムが答える。
「いや、昨日ペーターがやっていたのを真似たんだが…。」
「ペーター!!あんた何やってるのよ!仮にも店長なんでしょうが!!」
ついに店の奥に向かって怒鳴るアンリ。奥から焼きたてのパンを持ってきながら、当のペーターは悪びれもせず。
「なんだぁ、ヴィムが客を口説いただぁ、やるじゃないか。今度来たら紹介しろよ。」
カランカラン♪
今一度、怒鳴るところだったアンリを止めたのは扉に取り付けたベルが軽やかに鳴ったからであった。
「いらっしゃいま…あぁっ!あんたは…!」
「そうか…お前さん、店を出したと聞いていたがここだったか。」
「ええ、そうなんです。あの時はお世話になりました。」
「いや、俺は何もしていないさ。お前さんの努力あってのものだ。」
「いやそんな…。あっ、そうだ、こいつはうちの最新作なんです。試して下さい。」
「そうか、…では、貰うとするか。」
男は焼きたてのパンの香りを楽しみながら、一切れを口に入れる。
「うむ、厳選した小麦の風味を生かした味だ。腕を上げたな。」
そうして、男はペーターと言葉を交わしながら、幾つかのパンを買い求め店を出て行く。
数々の疑問に対し最初に質問をしたのはアンリだった。
「さっきの男は誰よ?随分親しいみたいだったけど。」
「あぁ、あれは…青雲飯店で一、二を争う腕を持つと言われたコン・タオローさんだよ。昔、俺が修行時代にダチが辞めちまった、って落ち込んでスランプだった時に、偶然知り合ってな。小麦の目利きや、アドバイスを色々してくれたんだ。ま、もっとも今は屋台を引いているって言ってたが。」
「は、屋台って、青雲飯店といえば有名店だ。そんな人物が何故?」
「復讐…。だとよ。くくっ、こいつはこれから面白くなりそうだぜ。」
復讐と言う物騒な言葉とは思えぬ軽い口調でペーターは言う。二人は複雑な表情で見守るしかなかった。
ここは、アーカムシティー。『食の大黄金時代にして、大暗黒時代にして、大混乱時代』。愛憎渦巻くこの街に、人は今日も生きていく。 (外伝第一話 了。)
あ゛~、妄想が止まらない~(ぉ いっそ、今月は鬼哭麺月間にしてやろうか~(ぉぃぉぃ
アーカムシティーに朝がくる。繁華街から少し離れた場所に立つ店、『エンジェル ブレッド』の扉が開き、焼きたてのパンの匂いと共に二人の女性客が出てくる。
「ねぇねぇ、小巻ちゃん、今の店員さんってば、面白かったよねぇ~。顔真っ赤にして『あ、あの、お客さん達かわいいから、サ、サービスして置きます』だってぇ~。」
「もう、風子ったら…、店員さん、新人さんっぽいし、からかったら駄目じゃない。」
「だぁって~、でもあれさ、小巻ちゃんに気があるのかもよ~にしし。」
ちょっといやらしい目つきで小巻を見ながら笑う風子をふわりとかわしながら
「馬鹿な事言ってないで、早く帰って朝ご飯にしましょ。」
「そう!それ、な~んで、あのクソ親父、『今日は飯が無いのか。なら仕方ないパンでも食うか。小巻、風子買って来い!』って、いつもなら『日本人の朝飯は米に決まっとる!』って、この街だから手に入るようなものの、何だろねあの態度。」
「まぁ、きょうはさっちゃん寝坊したみたいだし、きっと昨日のお客さんが帰るまで起きてて、片付けまでやってたからだろうけど…。」
「そういえば、なんか変わった人だったよねぇ、誰?」
「さぁ…、さっちゃんから聞いた話だと、昔、半年ぐらい父さんの下で修行をしに青雲飯店からきた…名前は…コン・タオローさんだったかな。」
「ってなんで、中華料理の人が寿司職人の所に修行にくるのよ?」
「出稽古ってやつじゃない?久しぶりに会ったらしくて父さん強引に家に連れて来たみたい。」
ふぅん、とあまり興味なさそうに聞きながら思い出したように
「で、さっちゃんは?」
「さぁ、…多分、クソ親父と“儀式中”…。」
小巻は憮然と言いながら顔が曇っていく。
“儀式”二人の父、渡部一斉が女の陰部に愛用の包丁の峯を擦り付ける一種のまじない。当然二人の娘にとって嫌悪の対象ではある。
「あのクソ親父はぁ!ったく、いくら腕が良いたって、なんであんなのおいとくかなぁ『寿司 安藤』は!オマケに、若頭のジェイはいけ好かないし、オカマの新沼やウドの大木のビック・サム、って絶対潰れてもおかしくないんだけどなぁ…。」
グウゥゥ…
力んだ風子のお腹が盛大に鳴り響く。
「ぷっ!くくく…、さぁ、ともかく、帰って、朝ご飯にしよう?」
「そうだね、私お腹ぺこぺこだよぉ。」
家路に急ぐ二人。そう、朝は必ずやってくるのだと信じて…。
さて、二人が出て行った『エンジェル ブレッド』でも一騒動起きていた。
「ちょっとヴィム!さっきの接客はなによ!ちょっとかわいいからって鼻の下伸ばしてみっともない!」
怒るアンリに、何故怒っているかわからない。と、いった感じでヴィムが答える。
「いや、昨日ペーターがやっていたのを真似たんだが…。」
「ペーター!!あんた何やってるのよ!仮にも店長なんでしょうが!!」
ついに店の奥に向かって怒鳴るアンリ。奥から焼きたてのパンを持ってきながら、当のペーターは悪びれもせず。
「なんだぁ、ヴィムが客を口説いただぁ、やるじゃないか。今度来たら紹介しろよ。」
カランカラン♪
今一度、怒鳴るところだったアンリを止めたのは扉に取り付けたベルが軽やかに鳴ったからであった。
「いらっしゃいま…あぁっ!あんたは…!」
「そうか…お前さん、店を出したと聞いていたがここだったか。」
「ええ、そうなんです。あの時はお世話になりました。」
「いや、俺は何もしていないさ。お前さんの努力あってのものだ。」
「いやそんな…。あっ、そうだ、こいつはうちの最新作なんです。試して下さい。」
「そうか、…では、貰うとするか。」
男は焼きたてのパンの香りを楽しみながら、一切れを口に入れる。
「うむ、厳選した小麦の風味を生かした味だ。腕を上げたな。」
そうして、男はペーターと言葉を交わしながら、幾つかのパンを買い求め店を出て行く。
数々の疑問に対し最初に質問をしたのはアンリだった。
「さっきの男は誰よ?随分親しいみたいだったけど。」
「あぁ、あれは…青雲飯店で一、二を争う腕を持つと言われたコン・タオローさんだよ。昔、俺が修行時代にダチが辞めちまった、って落ち込んでスランプだった時に、偶然知り合ってな。小麦の目利きや、アドバイスを色々してくれたんだ。ま、もっとも今は屋台を引いているって言ってたが。」
「は、屋台って、青雲飯店といえば有名店だ。そんな人物が何故?」
「復讐…。だとよ。くくっ、こいつはこれから面白くなりそうだぜ。」
復讐と言う物騒な言葉とは思えぬ軽い口調でペーターは言う。二人は複雑な表情で見守るしかなかった。
ここは、アーカムシティー。『食の大黄金時代にして、大暗黒時代にして、大混乱時代』。愛憎渦巻くこの街に、人は今日も生きていく。 (外伝第一話 了。)
あ゛~、妄想が止まらない~(ぉ いっそ、今月は鬼哭麺月間にしてやろうか~(ぉぃぉぃ
Comment
[26] 早速読みました
パンのブレッド(スペルが)と
銃弾のブレッド(だからスペルが)を
かけてパン屋ですか。
で、実は二丁拳銃やってないんですが
ネタばれが少々含まれてたりしますか?
はぅ。
月間なんていわず週間とか。毎日でも
良いんですが・・・。
でわでわ~
銃弾のブレッド(だからスペルが)を
かけてパン屋ですか。
で、実は二丁拳銃やってないんですが
ネタばれが少々含まれてたりしますか?
はぅ。
月間なんていわず週間とか。毎日でも
良いんですが・・・。
でわでわ~
[27] 保健衛生には細心の注意を!
「儀式」済みの包丁なんて使うなよ!即座に保健所やらなんやらが突入してくるからね!
というか包丁に限らず刃物にそんな儀式しちゃいけません。刃物は神聖なんですから。
やたらとエロい手つきで寿司を握る新沼さんが見てみたいなぁ。もちろん普通の客ならドン引きになるようなエロトークをしっぱなし?
というか包丁に限らず刃物にそんな儀式しちゃいけません。刃物は神聖なんですから。
やたらとエロい手つきで寿司を握る新沼さんが見てみたいなぁ。もちろん普通の客ならドン引きになるようなエロトークをしっぱなし?